レターズアルパック
Letters arpak界隈性を科学する
日頃の業務を通じて、まちの界隈性について考えることがよくあるのですが、なかなか一言で簡潔に表現しづらい概念です。
日頃の業務を通じて、まちの界隈性について考えることがよくあるのですが、なかなか一言で簡潔に表現しづらい概念です。
歩道の幅やせり出す看板の大きさや色、行き交う人の性別・年齢や密度など、界隈性を構成する要素はたくさんありますが、皮肉なことに細かく評価し分類すればするほど、実際の界隈が持つ魅力からは遠ざかっていくようにも感じます。界隈性が、人々の営みがもととなり、長い時間をかけて自然発生的にできたものと考えるならば、その要素を抽出し再現することはそう簡単なことではありません。機能性を評価することと、そのものが持つ意味や価値を評価することは別のプロセスを要するのかもしれません。今回は理解の補助線となりそうなものを2つほど書いてみます。
(1)情報の整理の仕方
少し前になりますが、「Google検索」や「Yahoo!検索」が主流となる中で、「Yahoo!カテゴリ」のサービスが終了しました。確かに、何か知らない概念や言葉の意味を知ろうとするとき、カテゴリではなく、まずその言葉を直接検索します。出てきた検索結果のページを開き、リンクされている関連ページ・画像・動画も見ながら、概念を総合的に理解していくのではないかと思います。まちの界隈性も、このように因果関係が個別的かつ曖昧で複雑であるのならば、個々の要素を従来のカテゴリで整理整頓するのではなく、相互の関係性を保持し、検索可能性を残すような整理の仕方があるかもしれません。
(2)ゲーム空間の界隈性
個人的な話になりますが、中・高生時代はゲームに明け暮れ、インドアな生活を送っていました。今はもうすっかり引退状態ですが、今でも新しいタイトルをチェックしたり、実況配信なども見たりしながら動向はフォローしています。近年のゲームエンジンの性能向上に伴う表現力の豊かさには目を見張るものがあります。空間の表現や人の動きがリアルになり、まちの界隈性がよく表現されているのを見ると、もしかするとゲーム業界はまちの界隈性について都市プランナーやデベロッパーにはないノウハウや知見を持っているのかもしれないなと感じます。
少し周辺の分野に目を向けると、参考になりそうなアイデアに溢れていることに気がつきます。実際にまちを訪れ、そこで感じることも大事にしつつ、デジタル空間にもせっせと足(?)を運び、そこから学ぶ姿勢も大事にしたいと思うこの頃です。
稲垣和哉:都市・地域プランニンググループ
223号(2020年9月号)の他記事
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