レターズアルパック
Letters arpak223号(2020年9月号)特集「あじ」
味のある写真
最近、長年愛用していたカメラが壊れてしまいました。有名な写真家からも定評のあるGRという機種です。最新版は高価すぎて手が出せなかったため、何世代か型落ちした中古品を学生時代にバイトで貯めたお金で手に入れたものでした。
最近、長年愛用していたカメラが壊れてしまいました。有名な写真家からも定評のあるGRという機種です。最新版は高価すぎて手が出せなかったため、何世代か型落ちした中古品を学生時代にバイトで貯めたお金で手に入れたものでした。
手に入れたはいいものの、このカメラ、画質はiPhoneより悪いしブレるしズームはできないし、とにかく使いにくかったのです。ブランド名に惑わされずにもっと使いやすいやつを買えばよかった…結構高かったのに…と後悔しました。
しかし、使い慣れていくうちに、画質の良い最新のカメラでは捉えられないような、味のある写真を撮ることができることに気がつきました。カメラの性能でカバーできない分、撮影時に無意識に気をはるようになったからか、ブレや光の漏れ等のノイズをありのままに捉えてしまうからか、技術的に現実を正確に記録するのには向いていませんでしたが、カメラの個性とそれを使用する自分の意志がうまく混ざり、味を引き出していたように思います。
高性能なもので溢れている毎日ですが、その中に隠れている不便さや面倒臭さに向き合ってみると、思いがけない味を発見できるかもしれない。そんなことを考えさせてくれたカメラでした。
小島みのり:都市・地域プランニンググループ
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