レターズアルパック

Letters arpak
   
214号(2019年3月号)今、こんな仕事をしています

鉄骨とCLTによる新たな都市木造モデル~兵庫県林業会館が竣工


協議会事務局として建替の事業管理全体に関わってきた兵庫県林業会館(設計:竹中工務店)が竣工し、一つの区切りを迎えました。

 協議会事務局として建替の事業管理全体に関わってきた兵庫県林業会館(設計:竹中工務店)が竣工し、一つの区切りを迎えました。
 これまで、特に都市部では、耐久性や耐火性に優れたコンクリート主体の建築が多数でした。しかし地球環境問題を踏まえ、LCCやLCCO2に配慮した建築における木造・木質化が注目されています。兵庫県林業会館の建替においては、CLT(直交集成板)を用いて中層事務所ビルにおける都市木造モデルを提示する試みが平成28年夏頃からスタートしました。兵庫県産材の普及啓発、利用促進、地域経済の循環を図ることを目的としています。

協議会形式での関わり

 学識者参加の協議会の立ち上げ、会議での検討を踏まえて基本設計実証を行い、プロポーザル発注の結果、竹中工務店・大和ハウス工業JVを特定しました。(詳細はレターズ206号を参照)設計から竣工まで、アルパックは事業管理で併走し、建替を契機とした普及啓発の試みとして都市木造等についての3回の勉強会、工事中の現場見学会、竣工見学会を開催、多くの参加を得ました。これらは建替事業自体を俯瞰する協議会形式だからこそできたことと思います。

外からCLTがガラス越しに見える

外からCLTがガラス越しに見える

新会館の実現と提示されたビジョン
 1月に竣工した新林業会館には、多くの特長があります。(1)建物に使ったCLTが外から見える(2)CLTと鉄骨を組み合わせた同様の構造形式により高層化も可能(今回は地上5階建)(3)CLTの併用による建物の軽量化などです。冒頭の新たな都市木造モデルとして、一つの解が提示されています。協議会で多く議論されたことですが、木材利用では適材適所が重要です。ガラスにより木への延焼防止と耐候性を担保しており、構造面では鉄骨とCLTの併用により純粋鉄骨造、純粋木造に勝るメリットがあります。木材を一建物に大量に使うことを目指すのではなく、大量でなくても適材適所で多くの建物に使うことを目指すべきではないか、その一つの手法として鉄骨と木(CLT)のハイブリッド構造がある、というビジョンです。

大きなガラスにより、明るい執務室

大きなガラスにより、明るい執務室

今後について
 本事業は竣工が終わりではなく、県産材・木材の利用促進、普及啓発が目的であり、今後も継続予定です。一つは、環境省補助事業で立命館大学の近本智行教授と竣工後3カ年について環境性能評価計測を行う予定です。成果は公表し、CLTを利用しようとする方への参考になればと考えています。また会館の見学対応についても検討しているところです。百聞は一見に如かず、元町駅や兵庫県庁など近くにお立ち寄りの際はぜひ実際にご覧ください。
※本業務は、三浦の他サスティナビリティマネジメントグループの畑中、中川、建築プランニングデザイングループの原田、塗師木も担当しています。

1階展示スペース 床には長さ10mのCLTマザーボード

1階展示スペース 床には長さ10mのCLTマザーボード

建築プランニング・デザイングループ/三浦健史

214号(2019年3月号)の他記事

バックナンバーをみる

タグで検索

ページトップへ