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254号(2026年6月)特集「こどもの学び場からはじまる、まちづくり」

学校づくりから持続可能性あるまちづくりへ


アルパックは創業以来、幼稚園、小・中学校、高等学校、大学における構想・計画、設計監理に携わってきました。とりわけ近年では、公立小・中学校の改築や再編統合、小中一貫校、義務教育学校に関する基本構想・基本計画(以下「構想・計画」)の策定に数多く関わっています。

1 アルパックと学校

 アルパックは創業以来、幼稚園、小・中学校、高等学校、大学における構想・計画、設計監理に携わってきました。とりわけ近年では、公立小・中学校の改築や再編統合、小中一貫校、義務教育学校に関する基本構想・基本計画(以下「構想・計画」)の策定に数多く関わっています。学校の構想・計画を通して、私たちは市街地、住宅地、山間地、海岸地など、多様な立地条件にある学校に向き合ってきましたが、いずれの学校も、地域固有の環境や歴史、地域住民とのつながりを有する、かけがえのない存在です。
 学校は、児童生徒にとって学習の場であると同時に、朝から夕方までを過ごす生活の場でもあります。近年の学校には、新しい時代の学びに対応できる教育環境に加え、バリアフリー化、児童生徒の多様化、環境配慮など、学校を取り巻く背景や課題への対応が求められています。
 本稿では、公立小・中学校の構想・計画に焦点を当て、学校を取り巻く課題と、これからの学校づくりについて、アルパックの取り組み姿勢を紹介します。

出展:各務原市学校建替基本方針【ラーニングセンター(学校図書館)と各室とのつながりイメージ】


2 学校を取り巻く現状と課題

①学校施設の老朽化
 全国の公立小・中学校は、児童生徒数が急増した昭和40年代から50年代に多くが整備されました。現在では、その約6割が築40年以上を経過し、うち7割以上の学校で改修や改築が必要とされるなど、施設の老朽化が顕在化しています。
 鉄筋コンクリート造校舎の目標使用年数は、70年から80年とする自治体が多く、現在は、長寿命化改修や改築を検討すべき時期を迎えています。一方、学校更新事業は長期間にわたり多額の事業費を要するため、事業スケジュールを計画的に進めることが求められます。
 また、昭和40年代から50年代に建設された校舎は、普通教室や特別教室を片廊下一文字型に配置した画一的な機能構成が多く、新しい時代の学びに対応した多様な学習活動が展開できる機能構成への見直しも課題となっています。

②児童生徒数の減少と特別支援学級等の増加
 小・中学校の児童生徒数は、多くの自治体で年々減少しており、2040年頃にはピーク時の3分の1程度まで減少すると推計される地域もあります。こうした変化に対応するため、将来推計を踏まえた適正規模・適正配置の検討が必要となっています。
 一方で、近年は特別支援学級に在籍する児童生徒や、通級指導教室へ通う児童生徒数が増加しています。そのため、児童生徒数の減少とは異なる動向として、特別支援教育等に対応できる学校施設が求められています。

③可変性や柔軟性のある学校施設
 今後の学校施設には、学習形態や児童生徒数の変化に対応できる可変性と柔軟性が求められています。
 平成29年(2017年)の学習指導要領改訂により、全国の小・中学校では、個別学習・グループによる課題解決型学習(アクティブ・ラーニング)が導入されました。校内無線LAN、電子黒板、タブレット端末などICTを活用した学習も進められていますが、教科横断的な学習に適したスペースの不足や、ICT 機器を含む収納スペースの不足といった施設面の課題も生じています。今後は、より多様な学習活動が想定されることから、用途転用や改修に対応しやすい学校施設のあり方が重要となります。
 また、バリアフリートイレ、スロープ、エレベーター等が設置されている小・中学校は一部に限られており、物理的・心理的なバリアフリー対応が十分とは言えません。障がいの有無などにかかわらず、誰もが利用しやすく、安心して学ぶことができる教育環境の整備が求められています。

④学校と地域とのつながり
 地域・家庭・学校が連携し、地域全体で児童生徒を育成することを目的としたコミュニティ・スクール(学校運営協議会)の取り組みが全国で進められています。
 地域と子どもたちのふれあいの機会として、小学校では放課後子ども教室や放課後児童クラブの開設、学校図書館の地域開放などが行われる取り組みが増えています。また、市民のスポーツ活動推進のため、グラウンドや体育館を貸し出している学校もあります。
 今後、コミュニティ・スクールの推進により、小・中学校は地域の拠点として、ますます重要な役割を担うことが期待されます。

⑤学校の場所
 学校の改築や小中一貫校の整備において、学校の場所は極めて重要な検討事項です。既存敷地から学校を移転する場合には、児童生徒の通学手段(徒歩・自転車・スクールバス等)の変更にとどまらず、地域における中心性や生活動線、学校が果たしてきた象徴的役割そのものが変化することを十分に認識する必要があります。構想・計画段階においては、通学距離や通学手段に加え、地域拠点としての役割、将来的な人口動向、公共施設配置との関係を総合的に整理し、複数案を比較した上で方向性を定める必要があります。
 学校の場所は、合意形成に時間を要する、または合意形成に至らない場合もあります。学校の場所を移転せざるを得ない場合は、構想に着手する前段階において十分な候補地調査を行うことが重要と考えています。

⑥学校整備の事業手法
 学校施設の長寿命化改修、改築、新築の事業手法は、主に従来方式(公設公営)のほか、民間活力を活用したDB方式(Design Build)、PFI方式(Private Finance Initiative)、リース方式があります。近年では、財源や事業スケジュールを踏まえ、従来方式とDB方式を比較検討するケースが増えています。開校後の長期的なライフサイクルコストも見据え、適切な事業手法を選択することも、構想・計画段階における重要な検討事項です。

出典:各務原市学校建替基本方針【ラーニングセンター(学校図書館)を中心に据えた学校施設のイメージ】

 

3 これからの学校づくりに取り組むのは誰か

 近代日本の学校の歴史は、明治5年(1872年)の学制発布に始まります。文部省小学校設備準則(明治23年・1890年)では、現在の学校校舎の原型となる間口5間(約9m)×奥行4間(約7.2m)が定められました。明治時代には、1教室上限80人という高密度な学級編成が記録されており、教室内の衛生・空気質環境を確保するため、天井高10尺(約3m)が必要とされてきました。これらの建築基準は近年まで継承され、昭和40年代から50年代の学校整備のピーク期には、行政主導による標準設計図を基に、片廊下一文字型校舎が多く建設されていました。標準設計図を基にすれば学校の工事図面は完成する時代でしたが、これからの学校づくりはそのような時代ではありません。
 これからの学校づくりは、地域の個性やニーズ、立地特性を反映し、最終判断をする行政・教育委員会のリーダーシップのもと、地域住民、保護者、教職員、児童生徒、専門家・設計者、施工者など、多様な関係者が協働で取り組むことが重要です。

4 学校づくりのプロセス

 学校づくりのプロセスには、構想・計画、基本設計、実施設計、建設工事、維持管理という流れがあり、構想の着手から新校舎の供用開始まで概ね6年、全面供用には10年近い期間を要します。
 アルパックは、多くの自治体において学校の構想・計画策定に携わってきました。私は、設計図面を描く前段階の構想・計画は、唯一無二の学校づくりの方向性を決定づける最も重要な期間であると考えています。
 これまでの学校や地域の歴史をどのように受け継ぐのか、子どもたちの居場所として、毎日楽しく学習・生活できる学校とはどのようなものか、学校施設のどの機能を地域に開放するのか、公共施設との複合化の可能性はあるのかといった学校づくりの理念・コンセプトは、構想・計画段階において、地域住民、保護者、教職員との合意形成を図りながら進めていきます。

学校づくりのプロセス
5 学校づくりから持続可能性あるまちづくりへ

 学校は、子どもたちの学習・生活の場であると同時に、原風景として記憶に刻まれる存在です。質の高い教育を支える基盤であり、地域住民にとって最も身近な公共施設でもあります。
 また、学校は生涯学習、文化、スポーツなどの活動として利用される地域コミュニティの拠点でもあり、災害時には、地域の指定避難所として利用される重要な役割を担います。
 学校づくりは、地域における持続可能性あるまちづくりの重要な契機です。私たちアルパックは、「行政・地域住民・保護者・子どもとの協働」「学校づくりはまちづくり」の視点を大切にしながら、これからも子どもたちの未来を照らす学校づくりを提案していきます。

 

建築プランニング・デザイングループ 間瀬 高歩
公共施設全般の調査、構想・計画、設計監理および事業化を専門とし、学校分野におけるエキスパート。
主な実績として、大学キャンパス再編整備の構想・計画、設計監理(名古屋市立大学、名古屋芸術大学)のほか、小・中学校の建替および小中一貫校の整備に関する構想・計画策定(磐田市、掛川市、牧之原市、名古屋市、小牧市、岡崎市、一宮市、日進市、豊山町、美浜町、各務原市、中津川市など)がある。

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