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249号(2025年1月号)きんきょう&イベントのお知らせ

適塾路地奥サロン報告


福沢諭吉をはじめ幕末維新に活躍した偉人を数多く輩出し、現存唯一の蘭学塾遺構として国の重要文化財にもなっている「適塾」。大阪事務所のお隣さんです。今までそこに「ある」だけだったものが、「知る」ことで急に存在感を増し、価値と重みを感じるものへと変化する。そんな体験を、松永和浩氏のお話によって味わうことができました。

「適塾を守り伝えるために」
講師 大阪大学ミュージアム・リンクス/大阪大学適塾記念センター 准教授 松永和浩 氏
(第65回 2024年11月8日)

 福沢諭吉をはじめ幕末維新に活躍した偉人を数多く輩出し、現存唯一の蘭学塾遺構として国の重要文化財にもなっている「適塾」。大阪事務所のお隣さんです。今までそこに「ある」だけだったものが、「知る」ことで急に存在感を増し、価値と重みを感じるものへと変化する。そんな体験を、松永和浩氏のお話によって味わうことができました。
 適塾はその塾生が大阪大学医学部の元になる学校をつくったことから、「大阪大学の精神的原点」とも言われています。塾をひらいた緒方洪庵は、医師であり、蘭学者であり、教育者。勉学に励み、性格は温厚篤実、医師として貴賤で対応を変えることはなかったそうです。患者からもさぞ慕われていたことだろう、と思いきや…威光がありすぎて患者からは恐れられていたとか。「患者は『先生より弟子に往診へ来てほしい』と言っていた」というおもしろいエピソードを福沢諭吉は残しています。
 この他にも、松永氏からは緒方洪庵やその妻の八重、塾生の福沢諭吉とその仲間達の人間味あふれるエピソードをお話しいただき、今まで感じていた偉人像からグッと生身の人間感が増し、親しみを覚えました。
 その後、適塾を守り伝えるための数々の防災・保存の取組についてお話いただき、そのひとつとして、クラウドファンディングによって実現された「適塾建物の3Dモデル」をご紹介いただきました。これがとても精巧に作られており、この建物で学び、暮らした様子がありありと思い浮かび、より一層身近に感じることができました。
 今まで何気なく見ていた適塾建物の一部分も、「ここで緒方洪庵が涼んでいたのか」と思うと重みが増します。適塾建物の展示や公開、それにまつわる情報発信を行うことで、地域の人たちに興味関心を持ってもらい、シビックプライドを醸成していく。それがまた適塾を守り、伝えていくことにつながるということが実体験できた場となりました。
※「適塾建物の3Dモデル」:https://sketchfab.com/Tekijuku_UOsaka/models
 余談ですが、会場では大阪大学発の災害支援プロジェクトのストーリーに登場した銘酒「緒方洪庵」の試飲(!)もさせていただきました。日本酒にあまり馴染みがない私でも飲みやすく、香りもフルーティでスッキリとした味わいでした。日本酒がお好きな方はぜひ、大阪大学の公式ショップを覗いてみてください。

適塾路地奥サロン実行委員 倉見 祐子

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