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244号(2024年3月号)今、こんな仕事をしています

線引き都市から非線引き都市へ~土地利用制度の見直し~


松江市は令和5年2月に、線引き制度(市街化区域と市街化調整区域による区分)による土地利用コントロールから「線引きを用いない土地利用コントロール」に移行していくことを表明しました。

 松江市は令和5年2月に、線引き制度(市街化区域と市街化調整区域による区分)による土地利用コントロールから「線引きを用いない土地利用コントロール」に移行していくことを表明しました。
 人口20万人を超える都市が、線引きを廃止するのは全国的に見ても珍しい選択です。背景には、調整区域にある集落地の深刻な人口減少などがあります。これまでも調整区域では、開発許可制度を活用し、一定の開発を認めてきましたが、元々定めている用途の建築物以外を新たに建築できるかは時間をかけた審査が必要で、新たな建築ができるかできないかは不透明な状況でした。市域内のバランスのとれた発展に向けて、調整区域にある集落地のようなところでも、新たな「チャレンジ」ができるということを知ってもらう、発想を転換してもらうために、新たな建築が「基本的にはできない」から「基本的にはできる」形にするため制度を見直すこととなりました。
 線引き制度は、新たな開発圧力に対して、市域を文字通り線で区切り、市街地の規模をコントロールする制度です。開発圧力の強い時代には、線で区切り規制をすることが有効ですが、人口減少が進み開発圧力が低くなるこれからの時代は、単純に規制するだけでなく、小さなニーズを拾い上げ、うまく誘導する、柔軟な土地利用コントロールが必要です。もちろん、宍道湖や中海周辺に広がる良好な農地や緑豊かな山地、歴史ある神社など、調整区域には松江の魅力を形作る様々な資源があり、それらを守ることも必要です。

良好な農地と隣接する集落地

良好な農地と隣接する集落地

 現在、新たな土地利用制度として、用途地域や用途白地における特定用途制限地域などによる「ベースの土地利用コントロール」と、地域の特性に応じた「きめ細やかな土地利用コントロール」の両輪でコントロールしていく制度を検討しています。全国的に人口減少が進む中で、地域の持続性を高めるためにどのような土地利用制度が必要なのか、その一つのあり方を模索しています。

ソーシャル・イノベーティブデザイングループ 橋本晋輔

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