レターズアルパック
Letters arpak人柄が生み出す小さな経済循環
私は日頃より行きつけの銭湯に行くのが好きです。単にお風呂やサウナを楽しむのはもちろんですが、綺麗に手入れされた敷地内のお庭から滲み出ている、番台に座るおかみさんの人柄につられて訪れている側面もあります。孤独に一人暮らしをする私にとっての、ある種の福祉施設です。
私は日頃より行きつけの銭湯に行くのが好きです。単にお風呂やサウナを楽しむのはもちろんですが、綺麗に手入れされた敷地内のお庭から滲み出ている、番台に座るおかみさんの人柄につられて訪れている側面もあります。孤独に一人暮らしをする私にとっての、ある種の福祉施設です。
ふと周りを見てみると、このような単に店舗の持つ機能・サービスだけではなく、そこで営む店主の人柄が人を呼び寄せるコンテンツとなっているものがあるかと思います。昔ながらの定食屋やスナック等はわかりやすい例でしょうか。商店街で婦人服店が根強く生き残っているのも、服よりも店主とのコミュニケーションを求めて人が訪れるからだと最近聞き、なるほどと思いました。
店主の人柄が色濃く滲み出ているような店舗にはやはり一定層のファンがおり、多様な人が何度も通い集う文化的・社会的な場(居場所)として機能しつつ、小さな経済循環を生み出しているように思います。ある種、地域にとって大切な資源です。
一方で、自営業の持続性の難しさ(担い手不足、施設老朽化等)と、店主の職人気質な性格等が重なり、周りにはそのような姿は見せず、営業の継続が困難となった場合にパタリと店を閉まってしまうことを見かけます。私の地元にあった、優しい店主がつくる絶品のチキンカツを求めて地元民が集まる鶏肉屋もそうでした。皆さんの身の回りにもそのような現象はあるのではないでしょうか。地域内で潜在的に、何気なく共有されていた価値が顕在化する瞬間です。
自分にとって大切で、単なるそのものの金銭的な価値以上に、価値を感じる〝環境〟を守るために、見返りを求めずとも日常的に支援できる、あるいは関わりしろを生むような仕組みみたいなものも、あっても良いのになあと思います。
都市・地域プランニンググループ 竹中健起
244号(2024年3月号)の他記事
バックナンバーをみる
タグで検索