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244号(2024年3月号)特集「環」

復興支援とプラットホーム


今年の元旦に発災した能登半島地震では、多くの方がお亡くなりになり、まだ多くの方が避難生活を余儀なくされていると聞いています。被災地域の皆様には心よりお悔やみ申し上げます。

 今年の元旦に発災した能登半島地震では、多くの方がお亡くなりになり、まだ多くの方が避難生活を余儀なくされていると聞いています。被災地域の皆様には心よりお悔やみ申し上げます。
 直下型地震により木造住宅が倒壊し多くの犠牲者がでた阪神・淡路大震災との類似点も指摘されますが、今般の被災地は半島部にあって高齢化や過疎化が顕著であり、人口減少化の日本における今後の災害復興の課題に直面しています。
 発災後29年を経て阪神・淡路大震災の復興過程を振り返って見れば、人口密集地域ゆえに被害は甚大でしたが、その過程には幾つかの問題点を含みつつも、恵まれた条件のもとで「創造的復興」を実現したと言えます。阪神・淡路大震災は「ボランティア元年」と表現されるように、我が国に災害ボランティア活動が生まれ、個人や企業の利害を超えた様々な支援活動が生まれました。
 アルパックも兵庫県や神戸市など自治体の調査や復興計画、被災マンションの建て替え支援や被災者への相談活動など、組織あるいは個人としても多様な関わりを経験しています。
 復興計画や復興事業には大小のコンサルタント会社や設計事務所、大手ゼネコンの計画チームが参加し、それぞれの会社の垣根を超えた共同作業が行われました。地震発生に遡りますが、1991年に日本都市計画学会関西支部が発足し、京阪神の大学、産官学の参加、土木建築造園の専門家による諸活動が行われました。また同じ年に都市環境デザイン会議が発足し関西ブロックでは実務者と実践的研究者を中心とした熱心な活動がありました。このような活動を通じて組織を超えた個人的なネットワークが醸成されていたというのも恵まれた条件だと思います。さらに個人的な信頼関係を基本としつつも、時にはノンプロフィットな「学会」「judi」として立場を使い分けて活動していました。このようなプラットフォームとなる組織を維持していくことが、それぞれの地域の資源となっていくと思います。石川県を含む北陸地域には都市環境デザイン会議北陸ブロックや学会活動を通じて、その人的な環(わ)が今後の復旧復興活動に効果を発揮すると期待しています。

シニアフェロー 堀口浩司

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