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241号(2023年9月号)きんきょう&イベントのお知らせ

未指定文化財について考える~娘と初めての地蔵盆~


未指定文化財について、言葉としてあまり馴染みがない方も多いかもしれません。文化財保護行政ではよく使われている言葉ですが、文化財保護法のもと指定・登録された文化財とは異なり、地域でこれまで大切にされてきたものの指定・登録はされていない歴史的価値のあるモノ・コトのことを総称しています。

 未指定文化財について、言葉としてあまり馴染みがない方も多いかもしれません。文化財保護行政ではよく使われている言葉ですが、文化財保護法のもと指定・登録された文化財とは異なり、地域でこれまで大切にされてきたものの指定・登録はされていない歴史的価値のあるモノ・コトのことを総称しています。
 平成31年に文化財保護法が改正され、文化財も保存だけでなく保存と活用に向けた制度の整備を進めています。その中で、指定制度しかなかった「無形文化財」や地域の生活文化・祭礼、年中行事などの「無形の民俗文化財」についても、登録制度ができて保存に向けた法整備も進んでいます。
 無形文化財や無形の民俗文化財は、これまで地域の人たちによって文化が形成され維持されてきました。しかし、人口減少等の影響を大きく受けており、担い手不足等によって滅失したものも多くあります。近畿では子どもが楽しみにしている「地蔵盆」を実施しなくなった地域も多くなっています。
 地蔵盆は、京都では今も残っている地域が多いですが、私が生まれ育った奈良県では残っている地域が少ないです。業務の中で未指定文化財について調査等は行っていますが、住民として関わっていないのはいかがなものかと感じて、約3年前に日本遺産でもあり、地蔵盆と太鼓台が残っている集落を調べて移住をしました。
 しかし、コロナ禍で地域行事が中止となり、やっと今年地蔵盆が開催されました。私が住む地域の地蔵盆は、自治会加入者のみが参加できるようになっており、青年会が中心となって子どもが楽しめるように無料の「縁日」や全員が景品をもらえるビンゴ大会を開催していました。歩行者天国にして、自治会館沿いの道路に多くの住民が集まり、この地で生まれ育った人たちも子どもを連れて帰って参加していました。ビンゴ大会の時にも、青年会が秋祭りで太鼓台を担ぐ人たちや子どもを募集する声掛けを行っており、地域の歴史文化を守っていくために活動する人たちに感銘を受けました。
 これまで、文化財に関する業務や自治会支援業務に関わる中で「地域の文化財を残すためには、自治会を中心とした地域の担い手が必要」「自治会を継続していくためには、地域住民にとって愛着のある活動や祭りの開催が必要」といった声を多く聞いてきました。今回、住民として初めて地蔵盆に参加したことで、改めてその言葉の重みを感じました。
 祭礼をはじめ地域の歴史文化は、時代の変化とともに変わりゆくものです。地蔵盆も、縁日など子どもが楽しめる行事を行いながら地域に根付き大切にされてきました。縁日を楽しみながら、わからないなりにお地蔵さんに手を合わせた2歳の娘を見ながら、色々な温かい感情に包まれた地蔵盆となりました。この記事を読んだ人が少しでも地域の歴史文化等について考えてもらう機会になれば、とても嬉しいです。

公共マネジメントグループ 水野巧基

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