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238号(2023年3月号)まちかど

大阪駅に段差・勾配が多すぎる件について


うめきたを始め周辺で再開発が続くJR大阪駅ですが、駅構内、周辺にはやたらと段差・勾配が多いと思いませんか。

 うめきたを始め周辺で再開発が続くJR大阪駅ですが、駅構内、周辺にはやたらと段差・勾配が多いと思いませんか。
 大阪駅とその周辺は、梅田の名がつく私鉄の駅も合わせると一日に200万人以上が利用する西日本最大のターミナルです。3月18
日にはうめきた地下にJR大阪駅の地下ホームが新設され、関空方面と直接結ばれることになりましたので、今後さらに多くの人が利用するようになるでしょう。
 先日、ニュース番組で、その新設地下ホームにつながる東海道線支線が大阪駅付近で急勾配になるため、貨物列車がそのままでは登り切
れず、最後尾にも機関車を連結して運行されると報じていました。全国的にも珍しい例のようです。これは線路の勾配の話ですが、大阪駅では駅構内でもよく見るとスロープや段差がとても多いことに気づきます。日々利用する際には、特になんとも思わないのですが、いったんスロープで少し上がってからエスカレータで下るといった謎の構造も見られます。改札内でもプラットホームに行くまでにいくつもの階段やスロープがあったり、やたら高低差があったりします。プラットホームでもかさ上げしている部分が見られます。一体これはなんでしょうか。
 有名な話として、梅田の地名の由来が「埋め田」から来たという説がありますが、古来、このあたりは低湿地帯で秀吉の時代に埋め立てて田んぼにした緩い地盤でした。そこに地下水のくみ上げをしすぎたこともあって地盤の不同沈下が起こり、このような状況をつくり出したということです。元来、地盤が緩いところにこれだけ大規模な構造物を作れば、沈んでいくのも理解できます。
 ちなみに、これが地盤沈下によるものと知ったのは、大学の土質工学の授業でした。それまで大阪駅を利用することがあっても特に意識することはなかったので、私にとっては意外な発見に興味が湧いたものでした。そのときに建設中だった関西空港も海底地盤が緩く、放置すると海に沈んでいくとも教わったのを覚えています(今はジャッキアップしているようです)。
 現在、梅田の地盤沈下は落ち着いているようですが、バリアフリーが求められる時代ですから、不特定多数の方が利用するような駅でこれだけの段差を放置し続けるわけにもいかないでしょう。いずれは根本的な解消が求められると思いますが、これだけ利用者が多いと、長期間人や鉄道を止めて大規模な工事をすることも困難と考えられます。拡大が続くターミナルで利便性と魅力を高めながら、いかにしてバリアを取り除いていくのか。これもまちづくりの一つとして考えると、この仕事に終わりはないと改めて感じます。

大阪駅の段差1

大阪駅の段差


大阪駅の段差

都市・地域プランニンググループ 石川聡史

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