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238号(2023年3月号)今、こんな仕事をしています

地方都市における新しい土地利用コントロールのあり方を考える


島根県松江市では、持続可能なまちとするために、「一極集中によるコンパクトシティ」ではなく、「市域内のバランスのとれた発展」をめざすことを打ち出しており、その実現に向けて、どのように土地利用をコントロールしていくのがよいのか、検討を続けています。

 島根県松江市では、持続可能なまちとするために、「一極集中によるコンパクトシティ」ではなく、「市域内のバランスのとれた発展」をめざすことを打ち出しており、その実現に向けて、どのように土地利用をコントロールしていくのがよいのか、検討を続けています。
 松江市(松江圏都市計画区域)の土地利用コントロール手法は、線引き制度(市街化区域と市街化調整区域による区分)が中心で、調整区域では基本的に開発が認められません。一方、調整区域にある集落地での人口減少は深刻さを増しており、土地利用規制を緩やかにするべきではという意見がこれまであげられてきました。そこで松江市では、開発許可制度を活用し、調整区域であっても一定の区域内であれば指定された用途の建築物(住宅など)が立地できるような制度(緩和区域制度)が導入されています。
 しかし、立地が認められるのは基本的には指定された用途の建築物だけです。たとえば、調整区域に立地しているIT企業から、事業拡大のために事務所兼用住宅を事務所に転用したいという相談を受けても、事務所が事前に指定された用途でなかったために転用が認められるまでに時間を要したケースなどが発生しています。人々の暮らしや活動のニーズの多様化が進む中で、今まであまり考えられなかったような、地域の活性化につながる新しい建築物の立地ニーズが生まれてくることも想定されます。市街化区域、調整区域と単純に線を引くのではなく、その時々の時代の流れや地域の状況を踏まえて、市街地の拡散は抑制しつつも、うまくニーズを受け止められる、柔軟できめ細やかな土地利用コントロールが必要です。
 松江市では、今年の2月に線引き制度から、線引き制度ではない新しい土地利用コントロール手法に変えていくことを発表しました。今後、具体的な土地利用コントロール手法を検討していくことになりますが、これからの時代の地方都市のモデルとして、新しい土地利用コントロールのあり方を打ち出していくことが求められます。

 
島根県松江市総合計画の一部抜粋

総合計画に示す「市域内のバランスのとれた発展」のイメージ

 

ソーシャル・イノベーティブデザイングループ 橋本晋輔

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