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238号(2023年3月号)今、こんな仕事をしています

川越市で『見る目を養う』ワークショップを開催しました


川越市の文化財といえば蔵づくりの街並み、川越まつりが主に挙げられる中で、地元の身近な文化財にも目を向けてもらう取り組みとして開催しました。

 川越市の文化財といえば蔵づくりの街並み、川越まつりが主に挙げられる中で、地元の身近な文化財にも目を向けてもらう取り組みとして開催しました。
 ここで一つ、小噺を。建築物や場所の価値は何をもとに形成されるのでしょうか。文化財に指定されるものの多くは主に建築学的価値、歴史的価値が根拠です。しかし、世の中的に価値のある建築物とはこの2つの評価軸のみで選ばれるものではありません。例えば、原爆ドームは文化財に指定されていますが、原爆ドームが保存に向かったのは、忘れてはならない記憶の象徴であり、人々の様々な思いが寄せられた建築物だったからです。このように、建築物や場所には人々の思いが寄せられます。
 このワークショップでは、各場所において参加者がどんな思い入れや経験、思い出を持っているかを尋ねました。つまり、個人と場所のつながりを記憶や体験という形で尋ねたのです。それにより、自分と場所のつながりや自分にとっての場所の価値を意識してもらうことができ、また、地域の皆で場所にまつわる記憶や体験を共有することで、地域における場所の位置付けや価値が分かります。
 ワークショップのテーマは「見る目を養う」ですが、「見る目」とは、教科書的な価値観に基づいて場所を見るのではなく、自分や地域とのつながりに基づいて見るということです。そうすることで「こんな場所も私や地域にとって大切なのだ」という新たな場所の発見=地域資源の再発見に繋がります。既に評価が定まっている文化財においても、また違う価値を描くことができるかもしれません。
 そのような場所は外の目から見ても空間的な魅力があります。例えば写真にある池は双子池と呼ばれていて、昔は牛を洗ったり、スイカを冷やしたり、子どもらの遊び場になっていたそうです。また、喜多院も歴史上重要な寺院ですが、地域の方々は身近で親しみのある関わり方をしていて、そのせいか、いい意味で寺院らしくない空間的魅力があるのです。

双子池

空間的な魅力がある「双子池」

ソーシャル・イノベーティブデザイングループ 筈谷友紀子

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