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238号(2023年3月号)特集「ぽかぽか」

桜が降る夜は


 冬の雪は社会に厳しさを突きつける一方で、春になれば様々な恩恵をもたらしてくれます。地下に浸透した地下水は湧き水として、川へ流れ出た雪解け水は、ミネラルを多く含み農作物の生育や豊かな漁場の礎となります。
 自然が雪解けの季節を待つように、私にとっても日の温かみを感じる時期は、新しい生活の始まりを感じさせる特別な存在になっています。

 今年の冬は長く寒い日が続き、雪もたくさん降りました。社会では、インフラ機能が停止し、都市部では、電車が止まり、地方では車の立ち往生が起きました。また、断水や停電が起きた地域もありました。
 冬の雪は社会に厳しさを突きつける一方で、春になれば様々な恩恵をもたらしてくれます。地下に浸透した地下水は湧き水として、川へ流れ出た雪解け水は、ミネラルを多く含み農作物の生育や豊かな漁場の礎となります。
 自然が雪解けの季節を待つように、私にとっても日の温かみを感じる時期は、新しい生活の始まりを感じさせる特別な存在になっています。
 昨年の3月、大学院の修了式の後、3年間にわたり自分の部屋より長く過ごした研究室の整理を終え、京都のワンルームマンションに移った時のこと、6階の新居の窓から入ってくる外の空気は、春の温かみがある一方で、冷たさも残り、それは新しい生活が始まるわくわく感と、家具だけが置かれた何もない部屋での不安感が入り混じった自分の気持ちそのものでした。移ってから4月1日までの数日間は、新生活を楽しむ一方で、自分が学生なのか社会人なのか、立場と居場所がないようで不安が大きくなっていったのを覚えています。それでもいざ新生活が始まると、雪は一気に解け、激流の中で日々は過ぎ、ふと季節を感じた頃には冷たさなんて全く感じないような季節になっていました。
 先日仕事で母校を訪れた際、よく前を通っていた美容室が閉店しているのを見て、一年の時の流れを感じました。長いようであっという間に過ぎたこの一年の経験が、自分の中で養分となり、新しい芽吹きとなれば良いなと思います。ぽかぽかする頃に、社会人1年目を振り返り、今度は新しいメンバーを迎え入れる側になったことを実感しているこの頃です。

二条駅と桜

新生活の買い出しついでに寄った二条駅

 
ワンルームマンションの部屋

引っ越した日の部屋

地域再生デザイングループ 辻寛太

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