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233号(2022年5月号)まちかど

市民に守られてきた 松本城と城下町


現存する五重六階の天守の中で日本最古の国宝である松本城に行ってきました。

 現存する五重六階の天守の中で日本最古の国宝である松本城に行ってきました。
 現存天守が残るのは全国で12の城のみであり、数が少ない理由としては、徳川幕府の「一国一城令」と「武家諸法度」及び明治政府による「廃城令」によるものです。松本城でも明治時代に、競売にかけられる等の危機がありましたが、博覧会の開催や住民の寄付によって天守が守られてきました。また、近年では「松本城およびその周辺整備計画」及び「松本市歴史的風致維持向上計画」によって、文化財以外にも道路の美装化や建物のファサード修景、井戸の整備等を複合的に実施し、歴史的まちなみ景観の向上を図っています。

四柱神社神楽殿で披露された津軽三味線

四柱神社神楽殿で披露された津軽三味線

縄手通りでの伝統工芸ワークショップ

縄手通りでの伝統工芸ワークショップ

中町通り

中町通り

 これまで、多くの城や城下町を訪れましたが、松本市の取組は目新しいものが多くありました。近年、熊本城等をはじめ、お城にゆかりのある武将に扮装した人達が観光客におもてなしをする取組は全国各地で見られますが、松本城では6家(石川氏・小笠原氏・戸田氏・松平氏・堀田氏・水野氏)が城主をつとめてきたこともあり、6家の城主に扮装した人達がおもてなしをしてくれます。
 また、近年の御朱印ブームによって全国各地の城でも「御城印」が販売されていますが、この御城印は30年以上前に松本城で販売されたのが初めてでした。松本城では、歴代城主2家の家紋の朱印符が販売されています。そのほか、城内はもちろんですが城外でも歴代城主6家の家紋がデザインされた装飾物が多く見られました。ここまで、歴代城主にスポットを当てているのは珍しく、市民の松本城への愛着を感じることができました。
 松本城を訪れた後は、城下町を散策しました。松本城周辺には、本町通り、大名町通り、伊勢町通り、女鳥羽川などのまちなみが残っていますが、城下町の雰囲気が色濃く残る中町通りと縄手通りに行ってきました。桜も散りはじめた4月中旬に訪れましたが、伝統的なまちなみにはおしゃれなカフェやお店が揃っており、多くの若者や観光客で賑わっていました。また、縄手通りと隣接する四柱神社では、地元住民によって運営される「松本ジャポニスム」が開催されていました。四柱神社の神楽殿では、大人や子どもが一緒に伝統芸能を披露しており、縄手通りでは、伝統工芸の作家がワークショップを行い、観光客が伝統工芸を体験する機会を提供していました。神社で催し物が行われ、伝統文化や伝統芸能をその場で体感できるというのはとても魅力的で、楽しい時間を過ごすことができました。
 松本市には初めて訪れましたが、私の先祖が松本城主であったこともあり、先人に思いを馳せながら、まちの魅力を堪能しました。これからもまちに足を運び、その地の歴史や成り立ちを大切にしながら、歴史まちづくりに関わるお手伝いをしていきたいと思いました。

松本城内と城外の歴代城主の家紋の装飾物

松本城内と城外の歴代城主の家紋の装飾物

松本城内と城外の歴代城主の家紋の装飾物

松本城内と城外の歴代城主の家紋の装飾物

公共マネジメントグループ 水野巧基

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