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232号(2022年3月)特集「種を蒔く」

種は吊るされ、入浴する


3年前から愛知県の渥美半島西端で、これまで地域の商業を支えたショッピングセンターの再生に取り組んでいます。大きな再開発事業等とは違って、地域に即した再生を目指し、地権者はもちろん行政、商工会、まちづくり会社、地元が一丸となり、工夫を凝らした小さな種を蒔き続けています。が、今回はこのお話ではありません。

 3年前から愛知県の渥美半島西端で、これまで地域の商業を支えたショッピングセンターの再生に取り組んでいます。大きな再開発事業等とは違って、地域に即した再生を目指し、地権者はもちろん行政、商工会、まちづくり会社、地元が一丸となり、工夫を凝らした小さな種を蒔き続けています。が、今回はこのお話ではありません。
 先日、テレビでコロナ禍にあって観葉植物を楽しむ人が増えていると報じられていました。観葉植物はこれまでも親しまれていますが、現在は、その種類は多く、原産地まで足を運んで買い付けを行うバイヤーもおられるとのこと。自宅でパートナーと共に興味深く見ていました。また、少し話が渥美地域に戻りますが、渥美は野菜だけではなく、ビニールハウスで夜間は電灯を灯し、栽培する電照菊など、植物の出荷も有名です。前述の施設再生を一緒に取り組む電照菊農家の方に先述の観葉植物の話をしたところ、温暖な気候を活かし、近年、東南アジア原産の観葉植物を扱う農家もおられるとのこと。さらに興味深く、身近に感じられました。
 そんな折、私が帰宅した際、リビングの天井からヤシの実大の種が吊るされていたので、パートナーに尋ねると、友人で渥美の電照菊農家から譲ってもらったと(なるほど、話はつながるものだ)。コウモリランというタイ原産の観葉植物だそうで、日頃から霧吹きで水をあげるようですが、水に浸すことも良いようで、何度か自宅の浴槽で水に浸されているのを見かけます。成長は早く、大きな葉をいくつもつけている姿から、コウモリランと言われる所以がわかる気がしますが、今となれば、愛着もわき、リビングに新しい風景を作ってくれています。
 『種を蒔き、水をやる』ではなく、『種を吊り、入浴させる』。まさかの発想ではありますが、まちの新しい風景は、自由な発想とともに地域の歴史・地勢・風土にあった方法を模索することで、ゆっくりと創出されるのかもしれません。渥美の新しい風景もじっくり考えながらじっくりといきたいです。

地域再生デザイングループ 木下博貴

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