レターズアルパック

Letters arpak
228号(2021月7月号)特集「東京 TOKYO」

きょうとあずま


皆さんは、学校を出て、すぐいまの職場に入られましたか?どこか寄り道をなさいましたか?大学院は、職に就いていてもよいのですね。1958年の1月、京都大学大学院に在籍したまま、就職しました。1963年6月まで、5年半、職場も住居も東京です。

 皆さんは、学校を出て、すぐいまの職場に入られましたか?どこか寄り道をなさいましたか?
 大学院は、職に就いていてもよいのですね。1958年の1月、京都大学大学院に在籍したまま、就職しました。1963年6月まで、5年半、職場も住居も東京です。
 修士論文は東京で仕上げました。テーマは「江戸時代住宅論」副題―後期封建社会の都市と庶民住宅について。庶民どもの住宅は残っていないので、とった研究方法は、一つは「お触書」つまり法律と、もう一つは「文芸作品」を調べること。井原西鶴の浮世草子、近松門左衛門の世話物、黄表紙のたぐいから古典落語まで。武家法度や町方の規則で、町組の制度や長屋の構造が判ります。昔「サザエさんの家の間取りを描け」というお題がありました。日本建築は、3尺×6尺の「モジュール」で構成されています。「日本永代蔵」を読み込むと江戸や大坂の商家の間取りが描けるのです。
 おかげさまで、論文は仕上がりました。「副産物」がたくさんできました。神田明神下、嬬恋坂で、工事監督をした時、独り者ですので、事務所に泊まり込み野村胡堂の「銭形平治捕物控」を全巻読みました。基礎を掘っていたら、ほんとにテグス糸で束ねた六文銭が出てきました。隣の印刷工場が火事を出し、アワ消火器で消し止めました。神田消防署から感謝状をもらいました。ご近所と仲よくなり、「め組」の親分が現場へササを立ててくれました。空間構造でみると、東京の地形は起伏が多い。ナンとか「坂」や、ナンとか「谷」がやたら多い。渋谷なんぞは谷底です。必需品は、変速ギア付き自転車。
 「時間軸」で見ると、江戸「開府」から400余年、三河、駿河、越後などから集まってきました。佃島は浪速から呼び寄せられ、漁業権を与えられた漁民のコロニー。こうして「江戸っ子」になりました。
 「東京」は、ローカルコミュニティの「集合」です。その「あつまり」がありましたね。「東都のれん会」54社。1951年(昭和26)設立時のモデルは「京百味会」。「味」だけ63社です。京都では2012年(平成24)京都府の肝いりで「京都老舗の会」が設立。すべての業種でなんと1970社。条件は、3代100年。

出典:東都のれん会・京百味会等のホームページより

出典:東都のれん会・京百味会等のホームページより

 

出典:東都のれん会・京百味会等のホームページより

出典:東都のれん会・京百味会等のホームページより

コロナ禍で、ハタと気が付きました。我々の務めは、広く永い目で、身近な問題解決。最もローカルなものが、最もインターナショナルに通ずる。持続する社会とは身近にあるのです。現地・現場で、人々に鍛えて頂くのです。
 1988年(昭和63)2月、「江戸っ子に奉仕しよう」と東京事務所を開きました。記念して、10月6日、隅田川川下り。浅草橋から浜離宮まで。九州、名古屋、大阪などの事務所は、お客さんへのお土産にブリキの金魚など、子どものオモチャを贈って祝いました。

出典:東都のれん会・京百味会等のホームページより

出典:東都のれん会・京百味会等のホームページより

三輪泰司 :名誉会長

228号(2021月7月号)の他記事

バックナンバーをみる

タグで検索

ページトップへ