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226号(2021年3月号)今、こんな仕事をしています

篠山城下町で土蔵の再生に取組みました


篠山城下町は、篠山城跡、武家屋敷群、妻入商家群が一体となった風情ある風景が、地区の歴史的風致をつくります。阪神間から車で約一時間、兵庫県中東部に位置し、2004年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。

 篠山城下町は、篠山城跡、武家屋敷群、妻入商家群が一体となった風情ある風景が、地区の歴史的風致をつくります。
 阪神間から車で約一時間、兵庫県中東部に位置し、2004年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。
 アルパックでは、保存対策調査から重伝建地区選定の支援、まちなみ保存会の支援と約20年間、地区のまちづくりのお手伝いを続けるとともに、設計監理者という立場で、古民家再生に携わってきました。
 令和2年度は町家の土蔵を再生しました。この土蔵は、銀行として利用されていた町家のもので、間口が2間、奥行5間と、一般的なサイズの倍近くの面積で、篠山城下町でも大型の部類に入ります。

再生後の外観

再生後の外観

再生前の外観

再生前の外観

 再生前は、経年による傷みが各所に見られました。屋根瓦は劣化やずれがひどく、雨漏りの痕跡も確認できました。壁の左官仕上は剥落し、多くが波鉄板に置き換わっています。構造材の腐朽もありました。古民家再生に度々登場するメンバーは、大工さん、瓦屋さん、左官屋さん、建具屋さんです。今回も、このメンバーを中心に工事を進めます。まずは屋根の修理です。古瓦や葺土を丁寧に撤去し、新しい瓦を葺きます。昔の瓦は小振りなサイズで、軒瓦や袖瓦の垂れや熨斗瓦の厚みも薄くなっています。そこで、64版という一回り小さい瓦を採用し、役物は特別に焼いた「篠山型」瓦を使って仕上げます。続いて壁の修理です。土を何度も塗りつけて修理した厚みのある土蔵の荒壁に、「灰中塗」という、ざらりとした手触りの、ほんのり土色の砂漆喰のような、丹波地域特有の仕上材を塗ります。他に漆喰塗の蔵戸の修理や、腐朽軸組の根継や取換え、構造補強も行い、内部も居室としてリノベーションすることで土蔵の再生は完成です。

壁と軒裏の修理の様子

壁と軒裏の修理の様子

リノベされた室内

リノベされた室内

 工事は、昔ながらの工法を使うことが多く複数の工種を重ねることも難しいので、どうしても時間と手間がかかります。それでも、毎年少しずつながら、伝統的建造物の丁寧な修理が積み重なることで確実に町並みの魅力と質の高まりを実感できます。

建築プランニング・デザイングループ 和田裕介

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