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226号(2021年3月号)特集「萌え」

アスパラガスに萌える


初春の季語に「下萌」ということばがあります。早春、去年の枯草の下に隠れるように芽が生え出ることで、春の訪れとともに草木の生命力を感じられることばです。

 初春の季語に「下萌」ということばがあります。早春、去年の枯草の下に隠れるように芽が生え出ることで、春の訪れとともに草木の生命力を感じられることばです。
 さて、我が庭のコンクリートに囲まれたほんの小さな植栽帯で、毎年春の訪れとともに、数年前に植えたアスパラガスがニョキニョキと顔を出します。冬の終わりの寂しげで雑多な空間に、愛くるしい姿で、突如に颯爽と登場してくれるのです。そして、その芽生えを目の当たりにした途端、まさに「萌え~」な感情に誘われます。毎年出てきてくれるのですから、もう顔なじみの親戚のようです(もちろん美味しく頂いてしまいますが…) 。
 そして、厳しい冬を地中で過ごしたその旺盛な生長力は、一瞬たりとも管理者の見逃しを許さず、うっかり採り忘れれば、1日で食べる時期を逸した巨大なアスパラとなってしまいます。その一筋縄ではいかないところも含めて、なんだか「萌え」な存在なのです。
 さて、アスパラガスの和名は、「オランダキジカクシ(阿蘭陀雉隠)」だそうです。ん?意外に古風な名前。実は、江戸時代に観賞用として持ち込まれ、明治時代初期から食用栽培されているそうで、雉が隠れることができるほど枝葉が生い茂ることに由来しているそうです。なるほど、最近の野菜だと思っていたのでかなり意外でした。その生い茂った枝葉で栄養を溜め込み、翌春の力強い芽吹きにつながるのです。
 今年も、様々な地域やまち、組織で、枯草の下に隠れている、アスパラガスのような力強い芽吹き(人やモノ)と出会っていけることを楽しみにしています。

サスティナビリティマネジメントグループ 植松陽子

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