レターズアルパック

Letters arpak
   
225号(2021年1月)まちかど

にぎわいと歴史・文化により 紡がれるみち


八王子駅北口には、全国的にも珍しいターミナル駅直結の歩行者専用の幹線道路が整備されています。

 八王子駅北口には、全国的にも珍しいターミナル駅直結の歩行者専用の幹線道路が整備されています。
 八王子市は、都内で旧東京市の次に市制を施行した、多摩地域最大の都市です。戦国時代に後北条氏が築いた八王子城(城の鎮守として牛頭天王の八人の王子神が祀られている)が地名の由来になったと言われています。江戸時代になって甲州街道の整備が進められる中で、交通の要衝でもあった八王子には街道最大の宿場町(八王子十五宿)が整備され、明治以降も街道を中心に市街地が形成されていきました。
 戦後の戦災復興事業において八王子駅と甲州街道を結ぶ三本の放射道路が整備され駅前の幹線道路網が形成されました。このうち今回取り上げる西放射道路はユーロードと呼ばれ、延長五百メートル、三放射の中で唯一の歩行者専用道路となっています。
 ユーロードは駅前の歩行者専用道路ということもあり、沿道には多くの店舗が連なり、一日二万人以上の人が訪れる市内で最も活気にあふれた空間となっています。、格子状のまちを斜めに貫くように整備された道路であり、三角形の残地はポケットパークとして整備され、通りの表情や人の流れに変化を与え、にぎわいを創出するアクセントとなっています。

歩行者専用の都市軸ユーロードのにぎわい

歩行者専用の都市軸ユーロードのにぎわい

 江戸時代以降、八王子が絹の街としても栄えていく中で、ユーロードに隣接する中町に花街が形成され、現在でも十数名の芸妓が活動しています。中町花街は、昼間若者などで賑わうユーロードと共存する、夜の大人の空間を形作っています。
 令和二年六月、八王子は「霊気満山 高尾山~人々の祈りが紡ぐ桑都物語~」として日本遺産に指定され、八王子駅北口においても絹織物や芸妓、八王子まつりなどが構成文化財として位置付けられました。ユーロードもその歴史・文化を未来にわたって紡いでいくみちとなっています。
 にぎわいや歴史・文化もそこで暮らす人々の生活がベースにあってこそ。この地で営む人、子を育てる人、学ぶ人など、当たり前の生活の場を当たり前のものとして育んでいくこともユーロードを紡ぐ大切な糸になります。
 どんなみちにも歴史やそこでの営みが刻まれています。外出しにくい時勢ではありますが、たまには見知らぬみちでにぎわいや歴史、人々の営みに思いを馳せながら、ブラブラしてみてはいかがでしょうか。

ユーロードに面する中町花街の落ち着いた雰囲気

ユーロードに面する中町花街の落ち着いた雰囲気

都市・地域プランニンググループ 山崎将也

225号(2021年1月)の他記事

バックナンバーをみる

タグで検索

ページトップへ