レターズアルパック

Letters arpak
224号(2020年11月)特集「あそび」

あそびを演出する地域づくり


「あそび」とは何か、考え始めるととても難しいです。仮に、なんとなく「暇」な状態を豊かに体験化したものが「あそび」だとすると、「あそび」と都市には様々な関わりがある気がします。外での打合せが早く終わった勤め人が、近所の喫茶店で次の予定まで時間をつぶす。

 「あそび」とは何か、考え始めるととても難しいです。仮に、なんとなく「暇」な状態を豊かに体験化したものが「あそび」だとすると、「あそび」と都市には様々な関わりがある気がします。
 外での打合せが早く終わった勤め人が、近所の喫茶店で次の予定まで時間をつぶす。学校や部活が早く終わった高校生は、駅で電車が来るのを待つ。このシーンには、本当は何かしたいけど何もないという、退屈が強いられている状態から、ぼうっと心地よい暇な時間を過ごしているという状態のグラデーションが存在します。
 魅力ある都市とは、ぼうっと心地よい暇な時間を過ごせると同時に、退屈が強いられることが少ない、というのがひとつの要素ではないかと思います。センシュアス・シティ(官能都市)が標榜する概念に近い感覚です。地域づくりに携わる身として、「あそび」を演出するような視点を持っていたいなと思います。なかでも、自宅から駅までの道や、次の予定までのちょっとした時間などの、「間」での演出が効果的なのではないかと考えています。
 今、機能の検討を進める滋賀営業所もそういう「間」の場所にあります。空間的には駅と商店街の「間」にある新地地区。そして、近くには学校や市役所などがあり夕方には駅への往来が増え、時間的には家に帰るまでの「間」であるとも言えます。ですので、移動の間に寄り道したくなるような仕掛けを、滋賀営業所で提案できればと思っています。
 そんな思いから、最近、ちいさな実験をはじめています。有志のメンバーで、滋賀営業所が入っている町家で「ビールづくり」をしています。とはいえ、酒税法があるのでアルコール度数は1%未満で、販売も出来ません。ゆくゆくは、早く仕事が終わった人が軽く一杯ビールを、旅行者が「クラフトビールがあるらしいよ」と「間」にある営業所に立ち寄れると、人の動線が変わり、地域の魅力を増していけるのではないか。そんなことを考えながら、そして東近江市にある政所茶や木地製品などとのコラボレーションも企みながら、「あそんで」います。

ビール醸造キット

ビール醸造キット

小川直史:地域再生デザイングループ

224号(2020年11月)の他記事

バックナンバーをみる

タグで検索

ページトップへ