レターズアルパック

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220号(2020年3月)その他

アルパック・スピリッツ「関西文化学術研究都市」


日本の学術研究都市といえば、東のつくば、西のけいはんな(以降、「学研都市」)を思い浮かべるのではないでしょうか。アルパックは学研都市の構想・計画段階から関わっています。今回のアルパック・スピリッツでは学研都市の計画づくり・まちづくりに関わってきた杉原会長と共に、学研都市の中心に位置する精華町の木村要前町長、渕上正博元事業部長、国際高等研究所の三宅諭氏、推進機構の中川雅永常務理事を訪ね、お話を伺ってきました。

 日本の学術研究都市といえば、東のつくば、西のけいはんな(以降、「学研都市」)を思い浮かべるのではないでしょうか。アルパックは学研都市の構想・計画段階から関わっています。今回のアルパック・スピリッツでは学研都市の計画づくり・まちづくりに関わってきた杉原会長と共に、学研都市の中心に位置する精華町の木村要前町長、渕上正博元事業部長、国際高等研究所の三宅諭氏、推進機構の中川雅永常務理事を訪ね、お話を伺ってきました。

■学研都市の背景にあるプランニングのコンセプト
「学研都市は研究と生活の場が隣接し、両者が一体となった都市を目指した」
 よく比較される筑波と学研都市では、背景にあるプランニングのコンセプトが異なります。筑波は国主導のプロジェクトで、既存の研究機能の移転がメインであり、そのまちで生活するのは主に研究者でした。
 一方で京都・大阪・奈良の中間地点にある学研都市は既にコミュニティのある精華町(京都府)などを中心に、新たな機能である民間研究施設を誘導しながら地域活力を生み出していくことを目指していました。そのためには、開発地域と周辺地域の区別をつけず、昔からの住民と新しい住民との交流と融合に配慮したプランニングが求められました。
 この「2つの精華町をつくらない」というコンセプトは、精華台小学校の配置に見られます。地元住民と新住民との繋がりをつくりだすために、小学校を新旧エリアの間に立地させています。これにより、地元住民も研究者など新住民の子どもたちを同じ学校に通わせることができ、子ども・親同士で交流が生まれました。

■コンサルタントとしての職能の確立
「誰もやったことのないビッグプロジェクトに取り組む中でコンサルタントの職能が確立されていった」
 当時は社会的にまだ都市計画コンサルタントという仕事の認知度が低く、また都市計画が仕事になるのかどうかも分からない時期でした。
 計画技術もノウハウもこれからという時期に、前例の無いビッグプロジェクトを前にして、アルパックの所員は行政職員と一緒に頭を悩ませながら考えていったそうです。このようなプロセスが行政との信頼関係を生み出し、また所員の技術力・ノウハウの蓄積に繋がっていきました。こうして、徐々に実績を積み重ね、現在の職能が確立されていきました。
 コンサルタントとして求められている役割に「提案すること」がありますが、それ以外にもコーチとしての役割があります。
 学研都市では、構想段階から「学研都市とまちづくりのあり方に関する研究会」などを開催・支援し、学研都市を精華町で受け入れていくまでの道筋をつけていきました。ここでの学識者との議論やアドバイスは国との調整などにおいて大きな後押しとなったそうです。また、研究会では、プロジェクト後の地元自治体の収支計画など、まちづくりの基礎となる様々な分野について学び、知見を深めていきました。
 さらに、学研都市の原型を学ぶために、国内外の事例視察を企画しました。筑波へは担当する精華町の課長以上すべての職員が現地を訪れ、職員それぞれが当事者意識を持って考えるきっかけをつくりました。また、アルパックの霜田稔さんは、ケンブリッジのサイエンスパーク、ベルギーの大学都市ルーバン・ラ・ヌーブにも足を運んでいます。ケンブリッジの視察では、サイエンスパークの周辺に大学の卒業生や研究機関が集積している「ケンブリッジ現象」を発見しました。これは学研都市でスピンアウトしたベンチャー企業を育成していく受け皿である、「けいはんなベンチャービレッジ」のプランニングに活かされています。
 アルパックの創業時、人数は少なかったもののその若さと体力と情熱でまちづくりのあらゆる分野に挑んでいたそうです。そのモチベーションの背景には、新しいことに挑戦するわくわく感、学ぶ楽しさがあったのではないでしょうか。

■アルパックの地域密着とは
「休日に家族で現地に遊びに行くことで土地勘をつけていった」
 まちづくりにおいては単なる技術だけでなく、それが社会でうまく機能するために地域での信頼や合意が必要となります。
 アルパックの所員は休日には奥さん・子どもを連れて学研都市の現場へ遊びに行ったそうです。平日は仕事のためスーツ姿で警戒されがちですが、休日は私服で家族といるため、地域の人とも自然に話ができたようです。仕事だけでなくプライベートでも地域と関わりを持つことで、地域の人たちからの信頼を得て、様々な情報を得ていきました。
 アルパックでは「地域密着」ということがよく言われます。このように計画・構想だけでなく、地域の生活まで重層的に関わっていくことがアルパックのやり方なのかもしれません。
 学研都市はアルパックの代表的なプロジェクトであることは知っていましたが、具体的な内容については知る機会がなかなかありませんでした。今回の視察でその内容を知るとともに、当時のアルパックの熱量や仕事に対する姿勢を感じることができました。
 学研都市については、ニュースレター199号「伝承譜 その4」を参照ください。

関西文化学術研究都市

関西文化学術研究都市

※アルパック歴の浅い職員が、エポックとなったプロジェクトの現場を創始者の三輪泰司や創成期のメンバーと共に訪れてアルパックのスピリッツに触れ、その一端を三輪やメンバー自身の言葉とともにみなさんにご紹介します。

稲垣和哉

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