レターズアルパック
Letters arpak謎の刻印を探せ!
私は旅にでると必ずといっていいほど近代建築や土木遺構を探しますが、中でも人里離れた森林をかき分け、巨大な煉瓦づくりの遺構が目の前に現れると大きな感動に包まれます。
私は旅にでると必ずといっていいほど近代建築や土木遺構を探しますが、中でも人里離れた森林をかき分け、巨大な煉瓦づくりの遺構が目の前に現れると大きな感動に包まれます。
現在は役割を終えた優美な煉瓦の馬蹄型のアーチなどの積み方、大小様々な形、レリーフなどを眺めると、よくぞ重機もない時代にこんなものを造ったと当時の土木技術者を尊敬します。また、隧道、治水施設、橋梁など煉瓦づくりの遺構に触れると時代を駆け抜けてきた語り部に出会った気分になります。
さて、数年前に何気なく眺めていた煉瓦に謎の刻印を見つけました。廃墟探検で落ちている瓦に刻印を見かけたことがありますが、これは新たな発見でした。「タカコの知らない世界」がはじまります。早速、まち歩きで知り合ったマニアックな友達にたずねると岸和田で赤煉瓦ネットワークのイベント岸和田×泉州大会があるとのことでお誘いを受けました。
ワタシ的には、岸和田は、だんじり祭やNHK朝ドラ「カーネーション」で有名なことは知っていましたが、イベントに参加するまで煉瓦づくりのメッカであったことを全く知りませんでした。
岸和田煉瓦の関係者の講演によると、明治初期、日本各地で煉瓦の製造がはじまり、岸和田でも明治5年に岸和田藩士の山岡尹方が岸和田藩練兵場跡で煉瓦製造をし、岸和田煉瓦(キシレン)が誕生したそうです。キシレンは、機械で製造(機械成形)する他社とは異なり、手で製造(手成型)され高品質で、同志社女子大学ジェームズ館や旧山口県庁舎、琵琶湖疏水、神戸異人館などに使われているとのことです。会場の展示には、全国から収集された謎の刻印がある煉瓦がたくさん陳列され、ものすごく興奮してしまいました。それぞれの煉瓦には、研究者による産地やメーカー、製造年、使用されている建物、採取場所、製法、サイズ、刻印の意味など詳細な説明があり、煉瓦の世界の奥深さを感じざるをえません。また、市内の煉瓦を巡るまち歩きでは、マニアの方と一緒に歩き、いたるところでキシレンの刻印(「×」セントアンドリュースクロス、山岡尹方がクリスチャンだったことによる)を見つけ、マニアによる刻印の洗礼をうけた気分になりました。
近年、倒壊による災害を未然に防ぐために古いブロック塀が姿を消しつつありますが、煉瓦の壁も同様です。現存するうちに刻印を探すという楽しみが増えたので、これからのまち歩きはさらに忙しくなります。
企画政策推進室 中村孝子
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