レターズアルパック
Letters arpak台湾のエリアリノベーション最前線!(その2)
昨年の11月に、毎年恒例になっている奈良女子大学と台湾の朝陽科技大学・東海大学の国際交流ワークショップの一部に同行し、高雄~台南~花蓮~台中における台湾のエリアリノベーションや地方創生の現場を視察しました。台湾でも時代を切り開く新しい発見と創造は、日本と同様に地方都市のまちなかや中山間地域で起こっていました。
昨年の11月に、毎年恒例になっている奈良女子大学と台湾の朝陽科技大学・東海大学の国際交流ワークショップの一部に同行し、高雄~台南~花蓮~台中における台湾のエリアリノベーションや地方創生の現場を視察しました。台湾でも時代を切り開く新しい発見と創造は、日本と同様に地方都市のまちなかや中山間地域で起こっていました。
海を眺められる倉庫群のクリエイティブ・センター(高雄)
高雄では、オランダのメカノー・アーキテクテンの斬新な高雄駅や衛武営国家芸術文化センター、世界で2番目に美しい地下鉄の駅「美麗島駅」、LRTの整備など、クリエイターが参加した都市交通を中心とした再整備が大々的に進んでいました。また港周辺の約100年前に建設された大規模倉庫群や操作場跡地は、昔の面影を残しながらアート&クリエイティブ拠点や広大な公園などにリノベーションされていました。様々な世代が利用する新しい市民文化の交流、表現、憩いの場として、当日は同人誌とコスプレのイベントなどでクールジャパンをテーマに大勢の人で賑わっていました。今更ながら大阪築港のレンガ倉庫でのクリエイティブ活動の展開をそのまま進めていたら、今頃世界をアッと驚かせる拠点になっていたのではないかと残念です。
人々が楽しく集まるなつかしくて新しい街(台南)
高雄から鉄道に乗り約1時間で、「紅椅頭(赤いプラスチックの椅子)」の観光キャンペーンで有名になった約400年の歴史をもつ古都台南へ。今回は、エリアや建物をリノベーションして再生している新農街、正興街、藍晒図文創園区、林百貨店などを訪れました。店先の「紅椅頭」に代表されるように「多彩な食を囲んで赤い椅子に腰を掛け世間話をしているありのままの姿」を伝える都市戦略に、地方創生の鍵が隠されていると思います。週末だったこともあり、家賃が比較的安く魅力的で高感度な店が集積しているからか、どの地区も地元の方々と観光客で賑わっていました。
地震が続く石の街の酒造工場跡地再生における葛藤(花蓮)
高雄から約1時間の国内線プロペラ機で、台湾東部最大の街「石の花蓮」へ。東海岸に日本人が港を築き、日本から多くの移民を受け入れた都市の歴史を感じつつ、街中に残る日本統治時代に建設された約4haの酒造工場跡地をリノベーションした花蓮文化創造産業園区を訪れました。巧みに建物を残しつつデザインされたランドスケープを体験することが出来たのですが、一昨年、昨年と続いた地震の影響で、現在建物内部は立ち入り禁止で見学することができませんでした。このまま解体されるのか、又はかなりの費用をかけて耐震改修するのか、台湾国民及び花蓮市民の葛藤が続くと思います。
大学と地域の連携によるエリアリノベーションとCOOLな廃墟ホテル(台中)
最後は、花蓮から約3時間30分の鉄道を乗り継ぎ、長陽科技大学・東海大学がある台中へ。今回の目的地は大学と地域とが連携したダウンタウンのエリアリノベーション。台湾において空き家率が最も高く、エリア全体が没落と廃墟化に向かっていた旧市街に、2012年に東海大学の建築系ゼミが、数十年放置された銀行跡をセルフリノベーションした拠点「中区再生基地」を構えて、さまざまなプロジェクトを提案し、実際に地域の方々と連携し行動、実践していました。全てのプロジェクトに大学が関与している訳ではないですが、一昨年訪れた時よりも大幅にエリア全体が急激に動いている印象を受けました。
圧巻はSOFホテル。閉鎖して約20年間放置されていた廃墟ホテルを、外観にはほとんど手を入れずに、内装をニュージーランドの建築家がリノベーションしていました。写真にある青のポルシェが止まっているようにCOOLな連中がこのエリアに集まって来ています。宮原眼科は盛況で、二号店として第四信用合作社をリノベーション、台鉄台中駅周辺の東協広場は、現在、外国人労働者のコミュニティ拠点になっていて、「台中のリトル東南アジア」に。フィリピン、ベトナム、イスラムなどの様々な国籍の人々が集まり、周辺には各国のレストランやショップも集積しています。日本もさらに国際化、多文化共生が進み、都市の中にこのような様々な国のコミュニティセンターが出来るのではないでしょうか。
追伸
今回も奈良女子大、台湾の朝陽科技大学と東海大学の先生方、学生の皆さんに大変お世話になりました。この場をお借りしてお礼申し上げます。なかなか個人では行かない秘境地や対極のダウンタウンなど、最先端の地域づくりの課題を解決している先進地視察は、毎回、自分の視野を広げてくれる貴重な国際交流の場となっています。
大阪事務所長 中塚一
219号(2020年1月号)の他記事
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