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216号(2019年7月号)まちかど

メルボルンの日常をつくるカフェや公共空間


日常の豊かな暮らしに向けた仕掛けづくりは特別なことではなく、ライフスタイルを体現する都市空間として、日常の延長で考えることが重要だと改めて実感しました。

 日常の豊かな暮らしに向けた仕掛けづくりは特別なことではなく、ライフスタイルを体現する都市空間として、日常の延長で考えることが重要だと改めて実感しました。
 メルボルンの平日の朝7時。中心業務地区(CBD)のストリートでは、オフィスへ通勤する人たちが、テイクアウトしたコーヒーカップを片手に持ちながら歩いています。また、傍らにあるカフェに立ち寄ると、どこも少なからず行列ができ、オープンカフェでスマホや新聞片手にコーヒーを飲んでいるビジネスマンを見かけます。
 「カフェの街」とも言われるメルボルンは、CBDの中だけでもものすごく多くの路面店のカフェが営業しています。

30年間で路面店のカフェがいたるところに立地(出典:Urban Choreography)

 1980年代以降のCBDにおける住宅政策により居住人口が増加したことで、様々な土地利用が進みました。その結果、グランドレベルの店舗が増え、もともとのコーヒー文化と相まって、コーヒーショップのニーズも増えていったのではないか、と考えます。

夜も外での食事を楽しんでいる

 日中も仕事仲間とのミーティングをしていたり、ランチを取っていたり、ぼんやり自分の時間を過ごしたり。様々な使い方でカフェの時間を過ごしているのが分かります。これは都市部のCBDだけの様子ではありません。近郊の住宅地にもオシャレなロースターやコーヒーショップが点在しています。
 オープンカフェは、そのブースを管理する向かいのお店の名前やロゴが冠され、パラソルやイス、テーブルの出し入れなど、そのお店により管理されています。一方で、パラソルを固定する穴が歩道上に開けられていたり、一部では、テーブルなどが固定されていたり、インフラ的に整備されているところも見られます。
 また、カフェは朝早くオープンしますが、昼の3時か4時に閉まります。代わりに賑わいを見せるのが、オープン席を設けたレストランなどです。
 訪れたのが5月初旬でしたが、南半球ということもあり、日本の10月後半頃の少し肌寒い時期でしたが、ヒーターやストーブで暖を取りながら、屋外での時間を楽しく過ごせる空間づくりがなされています。
 こうした日常のライフスタイルを実現し、メルボルンのまちの情景をつくるために、官民両方が理解し、支えているように感じました。
 日本でこうした場所を活用しましょうというとどうしてもイベント的な気を張った使い方を指向してしまいがちです。きっかけとしてはそういったところからスタートしながらも、普段の暮らしのなかで肩ひじ張らず、まちなかを楽しむ、という視点で、新たなまちの情景をつくっていきたい、とメルボルンのカフェの一席で思いを巡らせていました。

仕事の打ち合わせもカウンターに腰かけて

 

お店の使える空間を明示した境界標

地域再生デザイングループ 羽田拓也

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