レターズアルパック
Letters arpakグリーンインフラを巡る~ドイツ・北イタリア・スイス~
日本でも、気候変動や人口減少・高齢化等に対応した持続可能な地域社会の形成といった課題への対応の一つとして、昨今、「グリーンインフラ」の取り組みを推進することが盛り込まれています。
日本でも、気候変動や人口減少・高齢化等に対応した持続可能な地域社会の形成といった課題への対応の一つとして、昨今、「グリーンインフラ」の取り組みを推進することが盛り込まれています。
この春に、グリーンインフラに取り組み持続可能な地域づくりに取り組んでいるドイツ(シュバルツバルト、フライブルク)、北イタリア(マジョーレ湖)、スイス(アンデルマット)を視察してきました。その旅の中から、ドイツの森林に関する取り組みをご紹介します。
ドイツの森林を案内いただいた、フォレスターのランゲさんは、「グリーンインフラ」とは「グリーンにアクセスするインフラ」と解説され、森林の中の道は、木材搬出等のための単一用途だけでなく、人がそこに行き、「観光業として活用するための道」、「虫被害等を監視する道」、土場等の「作業をする場」と多機能であり、かつ年中使えることを前提に設計されているとのことで、「自然」だけでなく、「人」が基本となっています。
また、森林も単層林としてしまうと、虫被害や需要の変化により資産価値を下げるリスクが高めてしまうので、リスクを低減し、出来るだけコストをかけずに資産(森林)価値を高めるために、自然の力を活用しているとのことで、環境という視点ではなく、経済との直結している思想が印象的でした。ドイツでも、日本同様の鹿被害はひどく、フォレスターの仕事のひとつとして鹿を駆除し、天然更新する森にするための管理も仕事の一つのようです。
道には、搬出された木材がいたるところに積載されていましたが、現場で建材用、パン窯等の薪用、チップ用と分けられていました。経済的に利用できる背景として、地域にそれぞれ利用する事業者が立地し、地域の中でお金が回る仕組みになっているようです。農林業の生業が地域の景観をつくり、観光業としても人口以上の人が訪れているとのことでした。道中立ち寄った村では、イースターのお祭りに向けた展示の準備を公園でされていました。
なお、ランゲさんはこの数十年間ご自宅で薪ボイラーを活用されていましたが、燃やすのはもったいないからやめて、木はマテリアルに、そしてこれからは太陽の力を最大限に利用して生活していきたいとおっしゃっていたのも印象的でした。
視察先以外でも随所に、自然の力を最大限に利用していくための、人間側の知識・知恵や試行錯誤がうかがえました。グリーンインフラを活用していくためには、自然の力だけでなく、「人間」の力も試されています。
サスティナビリティマネジメントグループ/中川貴美子・畑中直樹
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