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215号(2019年5月号)今、こんな仕事をしています

伝統を活かした空間に「御杖村営住宅」


移住者やUIJターン者、単身・子育て世代を問わず、幅広い層の定住を想定した全5棟の御杖村営住宅が竣工しました。

 移住者やUIJターン者、単身・子育て世代を問わず、幅広い層の定住を想定した全5棟の御杖村営住宅が竣工しました。
 御杖村は奈良県の最東部に位置し、冬季の積雪が多く、総人口約2000人のうち約半数が65歳以上の高齢者となっています。この地域で住宅を計画するにあたり、住民の方から、御杖での暮らしぶりや、住まいの理想・アイデアをいただき、御杖ならではの住宅のあり方について検討しました。外観は伝統的な御杖の住宅の特徴を備えつつも、内部は現代の人でもストレスなく生活できる新しい住宅というコンセプトのもと、大きく3つの特徴で木造平屋(2LDK)の住宅を計画しました。
(1)外観
 伝統的な御杖住宅の特徴である山並み・街道と平行した棟方向とし、主屋は平入りとしました。また、シンプルな切妻屋根の軒先を延ばして軒下空間を広く確保するとともに、御杖産木材や漆喰等の伝統的な素材を用いました。

【外観】外壁:杉板貼 (御杖産) ・漆喰左官仕上

(2)広い玄関と土間
 約2.5坪の大きな玄関は、来客を迎える接客の場であったり、作業スペース、色々なもののストックヤードであったりと、外部と内部の中間的なスペースとして活用されることを想定しました。また降雪の多い地域なので、軒下の土間空間で自動車からキッチンの勝手口への動線を確保しました。

【広い玄関】腰壁・床:杉板張(御杖産)、壁:漆喰左官仕上、土間:豆砂利洗出

(3)プラン
 御杖の伝統的な住まいに見られる田の字型プランのような一体的な空間を目指し、廊下のないプランとしました。また、個室の1つを比較的大きくし、入居者の生活に合わせて部屋を2つに区切って利用できるよう、開口部の位置に配慮しました。
 また、1つの敷地に5棟の住宅が建つ集住に対する利点として、こどもたちが遊び、入居者の交流が生まれるコモンスペースを設けました。入居者の自然の中での豊かな生活が送られるとともに、人の活動であふれるにぎやかな地区が形成されることを願っております。

建築プランニング・デザイングループ/増見康平

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