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215号(2019年5月号)特集「旅」

建築を観る旅


いまから二十数年前の夏、名古屋以南の社寺仏閣、城郭、近代から現代の建築を観るため、関西、中国、九州、沖縄へ一箇月ひとり旅をした。
道中では三徳山三仏寺を参拝したことが今でも鮮明に記憶に残っている。ここでは当時の記憶を基に三仏寺投入堂について記しておきたい。

 いまから二十数年前の夏、名古屋以南の社寺仏閣、城郭、近代から現代の建築を観るため、関西、中国、九州、沖縄へ一箇月ひとり旅をした。
 道中では三徳山三仏寺を参拝したことが今でも鮮明に記憶に残っている。ここでは当時の記憶を基に三仏寺投入堂について記しておきたい。
 鳥取県中央部に位置する霊山、三徳山は706年の開山。修験道の開祖とされる役小角が開いたとされている。修験道は神道と仏教が融合したもので、山を神仏そのものとして敬う山岳信仰のこと。受付で緊急連絡先の記帳を済ませると輪袈裟を手渡され、情報が少ない当時の私は、社寺を見学しに来ただけなのに記帳と輪袈裟は何事かと疑問に思ったが、その理由は直ぐに分かった。修行の場であるため輪袈裟は略式の法衣、登山中は首から掛けて修行の身だしなみを整えなければならないのだ。鎖や木々の根などを頼りに途中起伏の激しい崖地を登っていくと、登山道からは見ることができなかった投入堂が、ようやく目の前に現れた。長い柱で床を支える懸崖造りで、岩窟の中に収まっている。建築時期は平安後期とされているが、どのように建てられたかは謎。役小角が法力で建物ごと平地から投げ入れたという伝説が語り継がれている。国宝の投入堂をはじめ、文化財が次から次へと現れる三徳山。道は険しく、ある程度の体力や勇気も必要である。
 この旅以後、長期間の旅はできていない。いつの日か、山・海を歩き、建築・都市を巡る、旅をしたいと考えている。

投入堂(国宝)
1995年8月筆者撮影

建築プランニング・デザイングループ/間瀬高歩

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