レターズアルパック
Letters arpakCLTを活用した耐火木造による福祉の拠点づくり
現在、神戸市において、「花みさきⅢ」という、木造による新たな福祉施設の建設が行われてます。本施設は、特別養護老人ホーム(ユニット型29床)に加え、生活介護事業所や就労継続支援B型訓練作業室を併設した、延床面積約1,800㎡・地上3階建ての福祉施設です。私たちは、本施設の設計を担当しました。
-「花みさきⅢ」の挑戦 -

「花みさきⅢ」完成予想図
現在、神戸市において、「花みさきⅢ」という、木造による新たな福祉施設の建設が行われてます。本施設は、特別養護老人ホーム(ユニット型29床)に加え、生活介護事業所や就労継続支援B型訓練作業室を併設した、延床面積約1,800㎡・地上3階建ての福祉施設です。私たちは、本施設の設計を担当しました。
このプロジェクトは、市が公募した福祉施設の整備運営事業者に社会福祉法人 神戸千ヶ峰会様が採択されたことから始まりました。施設は市有地を活用し、50年間の定期借地権により整備されます。地域に根差した福祉の拠点として整備されるとともに、災害時には指定緊急避難所としての機能も果たす計画です。
このプロジェクトの大きな特徴は、木造でありながら、「耐火建築物」として整備を行っている点にあります。耐火建築物とは、火災が発生しても、一定時間構造が崩壊しないこと等が求められる建築物です。木造でこのような性能を実現するためには、柱や壁などの構造部分を、石膏ボードなどの不燃材料で覆うなど、高度な設計対応が必要となります。そのための細かな部分の設計や、どのように工事を進めるかといった方法の検討は、とても難しい作業でした。設計にあたっては、メーカー等と詳細な納まりを検討したり、確認検査機関とも協議を重ねたりし、より確実な設計を目指しました。
さらに、2・3階の床にはCLT(Cross Laminated Timber)と呼ばれる材料を採用しました。CLTはひき板を繊維方向が直交するように重ねた分厚いパネルで、高い強度と寸法安定性を持ち、木造でありながら中大規模建築物にも対応できる比較的新しい建材です。今回の計画では、居住性能の向上を目的に採用し、特に振動や遮音といった面での効果を期待しています。
また、林野庁補助事業「CLTを活用した建築物等実証事業」にも採択されており、設計の過程で得られた課題や工夫について、関係者による協議会を通じて整理・共有を行いました。他の採択プロジェクトの事例からも、多様な用途や工法でCLTが活用されていることを知り、CLTの可能性を改めて実感する機会となりました。

協議会の様子

CLT工場見学
このプロジェクトを通して、私が特に強く感じたのは、「施主と設計者が一方通行の関係ではなく、ともに学び合いながらより良いものを創り上げようとする協働の姿勢の大切さ」です。計画段階では、施主である法人の方々とともにCLT工場やCLTを使った建物、そして他の福祉施設を見学させていただき、目指す施設の空間イメージを共有しながら意思疎通を深めることができました。また、構造や設備設計者、建材メーカー、確認検査機関、施工者といった多くの専門家の方々と力を合わせて計画を進めるプロセスは、私にとって大きな学びとなりました。
今回の経験で得た新しい技術への知見や、人と人との繋がりの中で生まれる協働の力を胸に、これからも持続可能な社会の実現に貢献できるような、より良い建築・計画提案を目指していきたいと思います。
251号(2025年9月)の他記事
バックナンバーをみる
タグで検索