レターズアルパック
Letters arpak豊中つばさ公園『ma-zika』1期開園!
大阪国際空港の飛行機撮影の聖地に公園が誕生しました。
当社はこれまで官民連携事業において行政側のコンサルタントを担うことが多く、民間事業者の立場で事業に参画するのは初めての経験。しかも、協力会社を含めた13社による大規模体制の事業全体の調整支援と、建物の設計が担当です。
~大阪国際空港の飛行機撮影の聖地に公園が誕生しました~

豊中つばさ公園「ma-zika」完成予想図
2023年4月、アルパックにとって珍しい話が舞い込んできました。「公園を一緒に作ってもらえませんか?」という、民間事業者からの依頼でした。
当社はこれまで官民連携事業において行政側のコンサルタントを担うことが多く、民間事業者の立場で事業に参画するのは初めての経験。しかも、協力会社を含めた13社による大規模体制の事業全体の調整支援と、建物の設計が担当です。これまで経験してきたアルパック単独や少数の企業とのJV(共同企業体)でのコンペ参加とは異なり、事業における責任の大きさをより強く感じる一方で、皆で一つのものをつくり上げる楽しさも感じていました。
もっとも、この時点ではコンペへの参加が決まっただけで、企画が選ばれるかどうかは不透明。2023年の夏は、9月1日の提案書締切に向けて、議論と企画に集中する日々となりました。
当初はどのように話が進むのか、戸惑いもありました。そんな中、土木設計を担当するキタイ設計㈱の坪倉氏と、N2 LANDSCAPE㈱の野口氏から、「飛行機から見下ろしたときに形がわかる公園にしよう!」というアイデアが生まれ、飛行機の進入灯を挟んだ2つの何もない敷地にまたがる「BANK(土手)」と「BRIDGE(橋)」の形が浮かび上がってきました。現在の計画ではBANKは縮小、BRIDGEの設置は断念となってしまいましたが、提案の方向性を決めたこの議論は今でも強く印象に残っています。
全体像が見えてから、議論のスピードは加速しました。アルパックが建築設計を担当した、芝生に覆われた大きなBANKと、緑豊かな公園に調和する管理棟やカフェの設計も進行。過去の記録を振り返ると、8月初旬になってようやく提案書の原稿に着手したようで、提案書の作成・取りまとめがよく1か月で間に合ったと、自分のことながら感心します。こうして13社の知恵と経験を結集した提案書は、締切前日の8月31日に完成しました。
そして10月9日、プレゼンテーションを経て、私たちのグループが選定されました。結果を聞いたときの、あの大きな責任から解放された感覚は、今でも鮮明に覚えています。
しかし、本当に大変なのはここからでした。発注者である豊中市の各担当課との調整に加え、大阪国際空港への着陸航路直下という立地条件のため、空港を運営する関西エアポート㈱や、国土交通省大阪航空局との協議が必要でした。
整備予定地の中央には飛行機の着陸誘導に使われる「進入灯」があり、これに支障が出ることがないよう、さまざまな厳しい条件が課されました。それらは、私たちの想像を超える厳しいもので、一つ一つを丁寧にクリアしていく必要があり、そのための資料作成や手続き等も当社の業務でした。BRIDGEの断念、屋根付き広場の反射検証、建物が計器進入方式に与える影響の確認……など、検討を重ねた結果、ようやく現在の計画で整備を始められることになったのです。
この時点で2024年9月、1期開園まで1年を切っていました。
その間、現場では造成工事が始まっていました。鬱蒼とした森のように茂る樹木、雑草が広がる敷地、土が積まれた場所…。まずは伐採と整地からのスタートです。
最初に現場を訪れたときは、「本当にここが公園になるのだろうか?」という思いもありましたが、何度か足を運ぶうちに、景色はどんどん変わっていきました。
アルパックが担当する建築についても、1期開園に合わせて南側管理棟の整備が進みました。図面は何度も見てきましたが、初めて建築物に関わる各種手続きを行い、実際に建物が現場で立ち上がった様子を見ると、設計に込めた皆の想いが具体化されていることに深い感動を覚えました。
ちょうどこの原稿を書いている日は、南側管理棟の建築検査日。これが終われば供用開始です。そして2025年8月12日には、私たちが2年間取り組んできた「原田緑地整備事業」が、いよいよ1期開園を迎えます。アルパックが設計を手がけた南側管理棟からは、大阪国際空港に着陸する飛行機を、これまでにない角度で間近に見ることができます。先日、着陸中の飛行機からも確認しましたが、管理棟の屋上にいる人と目が合いそうな感覚でした。
現在も日々、設計変更や工事が進行中で、全面開園は2027年3月予定です。まずは南側管理棟からの飛行機の眺めを、そしてその後も日々変化していく公園の姿をお楽しみいただければと思います。

豊中市の企業から寄付された美しいステンドグラスのある展望スペースから見える飛行機
クライアントに聞きました
豊中市・都市活力部空港課 課長 樋上 裕一 氏
何もない場所だった原田緑地計画地を、「人が集まり、長時間快適に過ごせるにぎわいの場にしたい」と計画が始まったのが約6年前。当初はこの場所に人を呼ぶことへの反対や、飛行機の安全を守る空港との細かな調整など課題も様々ありましたが、一つ一つクリアし、今やっと折り返し地点まで来ました。
このプロジェクトのゴールは、周囲に空港と工場が立ち並ぶこの地を、飛行機を間近で楽しめ、老若男女、たくさんの人が集い愛される公園に変えること。ですが、最終的なゴールは、駅や空港から公園への人流ができ、その途中にも店ができるなど、この周辺全体のにぎわいや価値向上につなげることだと考えています。そのためには、この公園も周辺環境や利用者に合わせて見直しながら、日々進化し続ける必要があります。
行政だけの力では、一度作ったら終わりになりかねない。それが民間の力と組み合わせることで、いろんな人のアイデア、新しい手法を取り入れながら、人を魅了しつづける空間にすることができる。そのためにも、信頼できるパートナー企業を得られるかが重要です。
建築プランニング・デザイングループ 浅田麻記子
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