１９９０年代初頭来の長期経済低迷を脱却すべく、新たな産業の基軸の形成や生産性の向上につながるイノベーションの創出に向けて、官民ともに様々な取組みが行われています。
　また、気候変動、少子高齢化、ＩＣＴの顕著な発展と急速に変化する社会環境のもと、変化に対応したイノベーションの創出機会も増えています。
　そのようなイノベーションの創出を地域で促進するイノベーション拠点に関する調査の一環として、国内外のイノベーション拠点の機能を調べています。
　経済成長の最も根源的な要素となるイノベーション創出に向けた展開は世界的な動向であり、海外における先進事例からも多くのことが学べます。そのような海外の先進事例の一つに、世界から注目を集めているSTATION Fがあります。STATION Fはフランスの実業家が、パリ市南部の13区にある旧国鉄の貨物列車駅舎をリノベーションして、２０１７年に開設しました。
　敷地面積約3.4ヘクタール、長さ約３００メートルの建物内に、国内外の約１０００のスタートアップ企業が入居し、30以上のプログラムが実施されています。また、マーケット、カフェ、バーも充実しており、一般市民を含め年間10万人が訪れ、常に賑わいを見せています。都市部に整備された巨大なイノベーション施設も関心が高いのですが、利用者からは多数のスタートアップ企業がいる環境や様々なプログラムが評価されています。特に厳しい選考に残らなければ利用できないプログラムもあり、独自のイノベーション支援の仕組みが構築されています。
　STATION Fから提供された資料によると、運営や事業についてスクラップ＆ビルドを繰り返していることが伺えます。定まることなく、変化し続けることが、イノベーション拠点にも重要な要素ではないでしょうか。

来街者で賑わうSTATION F（出典：STATION Ｆ提供）

来街者で賑わうSTATION F（出典：STATION Ｆ提供）

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