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242号(2023年11月号)特集「シェア」

目新しく都合よい言葉


シェアハウス、シェアオフィス、シェアサイクル、カーシェア、ライドシェア、シェアハピ…シェアという言葉を、ここ数十年の間によく耳にするようになった気がしています(私が中学生の頃にshareの英単語を習ったときは、日常で耳にするようなことはなかったように思います)。

 シェアハウス、シェアオフィス、シェアサイクル、カーシェア、ライドシェア、シェアハピ…シェアという言葉を、ここ数十年の間によく耳にするようになった気がしています(私が中学生の頃にshareの英単語を習ったときは、日常で耳にするようなことはなかったように思います)。このように、シェアを用いた造語がたくさん日常にあふれていますが、その使い方がどうもしっくりこないことがあります。歳もあり、新しい言葉をすんなり受け入れられなくなっただけかもしれませんが…(笑)。特に最も新しく知ったライドシェアなんて、全然しっくりきません。私がライドシェアから想像するのは「相乗りタクシー」です。ところがどっこい、ライドシェアの意味はものすごく簡単にいうと「白タク」だそうです。なんだか、なにかしらを共有する新しいサービスには「シェア」という言葉をとりあえず用いておけばいい、そんな風潮があるように思います。
 そういった疑念から少し原点を調べてみました。shareの語源をたどると、古期英語scearuやゲルマン祖語skeranaなどに由来するそうで、元の意味は、「ひとつのモノを切り分ける・分割する」です。それが時を経て「共有する」といった意味で用いられるようになったようです。つまり、モノを切りわけるシェアから、モノを切り分けないシェアへと変容してきたとのこと。現在、日常でよく耳にするシェア〇〇や〇〇シェアでは、モノのシェアの枠を超えて、コトのシェアとしても用いられることが多くなってきたように思います。時代の流れもあり、言葉の意味の拡大解釈から、言葉の使われ方や意味が変容していくことは、大変興味深いことではありますが、素直に受け入れるには少ししんどくもあります。受け入れられるキャパシティと心構えを備えておく必要性を感じます。
 さて、私も少しシェアという言葉を拡大解釈(想像)させていただきますと、「モノ」のシェア→「コト」のシェアとくれば、次は「トキ」のシェアかと思います。言葉騙しではなく、本当の意味で時間を分けて共有できる、モモのようなSFファンタジーな世界が来るかもしれませんね。また、その頃には、言いやすさの観点から、シェアからシャアになっているかも?

建築プランニング・デザイングループ 増見康平

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