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240号(2023年7月号)まちかど

短夜に妖怪談義とまち歩き


夏の夜の風物詩といえば、妖怪・幽霊・肝試し。ふらふらふら~とまちを散歩していると、案外ばったり出くわすかもしれません。

 夏の夜の風物詩といえば、妖怪・幽霊・肝試し。ふらふらふら~とまちを散歩していると、案外ばったり出くわすかもしれません。
 民俗学の大家・柳田國男は幽霊と妖怪(お化け)を明確に区別していました(今では諸説あるようですが)。それによると、幽霊は見える人を選ぶ(何かしら縁がある人の前に姿を現す)のに対し、お化けは場や時を選ぶが誰にでも見えるそうです。また「お化けは神が零落したもの」とも述べています。それが正しいかはまさに「神のみぞ知る」ですが、それくらい神と妖怪は紙一重だと考えると、八百万の神がおわす日本なら妖怪もまたそこかしこにいて、「会える」存在なのでしょう。
 妖怪がよく出現すると言われる時刻は、18時前後の「黄昏時」。昼と夜がまじりあい、向こうから歩いてくる人の顔もよく見えないので「誰そ彼(あなたは誰か?)」と問うことがその名の由来ですが、これは別名「逢魔が時」。妖怪と出くわし、「誰そ彼(あなたはヒトか?妖怪か?)」と問う時刻でもあります。そして出現場所だと「辻(交差点)」が有名。道と道が交差するところは、あの世とこの世が交錯する場所でもあるそうです。「黄昏時の四つ辻」とは交通事故が増える時と場所だと聞くので、そこにはやはり人の感覚を狂わせ、注意を散漫にする〝何か〟がある気がします。

やまんば電車:寝過ごすと、やまんばが出てきて食べられる。逃げるには「ひのかみひのかみ」と唱える。(息子談)

やまんば電車:寝過ごすと、やまんばが出てきて食べられる。逃げるには「ひのかみひのかみ」と唱える。(息子談)


 日本では妖怪や鬼のアニメが定期的に流行り、絵本コーナーには常にお化けの本が並んでいて、子ども達はこわがりながらもどこか楽しんでいます。我が家の5歳の息子はなぜか「やまんば」愛が強く(母を重ねている?)、「やまんば」本を読み漁っては倒し方を研究していますが、夜更かしして「やまんばが来るよ!」と言われると即座に布団に入りに行きます。 妖怪をこわがりながらも愛着を持ち、受け入れながらも遭遇しないように回避する。それはやはり、妖怪が遠く離れた異界の存在ではなく、すぐ傍にいて生き方やタブー、危険を教えてくれる身近な存在として認識されているからなのでしょう。
 そんなことを考えながら、我が家の小さな妖怪ハンターとまちを探検していると、いろんな妖怪を発見してくれます。子どもが語る、ちょっとこわい、ちょっと不思議、でもどこかとぼけた「妖怪」に涼を感じながら、昼間とは違った顔を見せるまちの姿も楽しむことができ、自然と愛着がわいてきます。みなさんも夕涼みを兼ねて、まちの妖怪探しをしてみてはいかがでしょうか。

地獄ボックス:遅くまで公園にいると、鬼から電話がかかってくる。(息子談)

地獄ボックス:遅くまで公園にいると、鬼から電話がかかってくる。(息子談)

企画政策推進室 倉見祐子

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