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240号(2023年7月号)今、こんな仕事をしています

ヤエックス株式会社 新社屋が完成しました


ヤエックス株式会社(以下、「ヤエックス」)は愛知県清須市西枇杷島町に所在し、主に全国の水族館や動物園をはじめ、プロスポーツ、テレビ局、アミューズメントパーク、スキー場、博物館、官庁、大学などへのグッズの企画製造卸の事業を展開されています。

 ヤエックス株式会社(以下、「ヤエックス」)は愛知県清須市西枇杷島町に所在し、主に全国の水族館や動物園をはじめ、プロスポーツ、テレビ局、アミューズメントパーク、スキー場、博物館、官庁、大学などへのグッズの企画製造卸の事業を展開されています。
 取引先は日本全国におよび、北海道から九州まで、社内デザイナーにより本社工場・協力工場においてものづくりを行い、文具・雑貨・玩具・アパレル・菓子など多種多様なニーズに対応されています。
 ヤエックスは、昭和42年に名古屋市東区において肌着類の問屋として弥栄メリヤス株式会社を創業され、昭和45年に現在地の清須市へ移転し、全国区の問屋へ販売網を拡大されました。順調に事業展開される中、平成12年の東海豪雨においてヤエックス近傍の新川が破堤し、社屋は床上浸水により甚大な被害に遭われました。
 社屋の老朽化のため、令和元年12月にはヤエックス加納宏会長とアルパック杉原相談役の小学・中学校からの同窓のご縁により、当社がヤエックス新社屋(以下、「新社屋」)の計画・設計・監理を担当させていただくこととなりました。コロナ禍のため、実施設計に入る段において令和2年4月から新社屋設計は1年半の中断となりましたが、加納宏会長・加納丈嘉社長の決断により令和3年12月設計を再開、令和4年9月旧社屋を解体、同年11月新社屋を着工、令和5年6月に新社屋が完成しました。

■新社屋の基本的な考え方
 新社屋設計では、ヤエックスの企業理念『ナンバーワンよりオンリーワン企業に』、『規模を追い求めず、差別性のあるオンリーワンの会社』、『人々の思い出に残るような商品を提供する会社』をふまえ、新社屋のコンセプトを検討しました。
 オンリーワンの社内環境を創出するための基本的な考え方として、デザイナーが創造的な作業に取り組めること、風通しがよく相互に意見が出しやすい環境であること、社員の顔が見えコミュニケーションがとりやすい環境であることを重視しました。
 新社屋は、災害に強い建築であることを基本とし、社員が主体的に創造でき、かつ相互に議論し、厳選された商品を世に送り出す情報発信の拠点とすること、社員の顔が見える一体的な執務空間、集中して考えたいときの個室空間を複合化することを設計方針としました。

■新社屋の設計
 敷地は第一種住居地域に位置し、戸建て住宅に囲まれた環境、周辺は工業地域や近隣商業地域が広がり、低層・中小規模建物が多い住工混在の土地利用となっています。
 周辺環境との調和と存在感のある新社屋を意図し、地下1階・地上2階建て、切妻屋根(妻入り)、棟高10.8メートルの鉄骨造建築、東海豪雨による浸水被害の経験をふまえ1階の床高さは地盤面から1.2メートルの高床式構造を設計しました。
 1階には商談ギャラリー、ミーティングルーム、プリンター室等を計画し、2階にはデザイナー、営業、出荷、総務の執務スペース、オンラインにも利用できるブースを計画しました。オンライン会議のニーズをふまえ、大きな会議室を設けるのではなく、複数のコンパクトなミーティングルームやブースを設けることを重視しました。
 2階執務スペースは社内の一体感があり、コミュニケーションがとりやすいオフィス空間を実現するため、鉄骨造の特性を活かし18メートル×11メートルの長大な無柱空間の構造計画としました。2階の天井は切妻屋根の形状を室内に表し、ひとつ屋根の下での開放的なオフィス空間、北側天井にはトップライトを7箇所設け、自然光が降り注ぐ空間を設計しました。
 新社屋の外壁はモノトーン、内装はモノトーンと木目を活かし落ち着きのある色調としました。色調をモノトーンや木目で構成することにより、社内のアクティビティやデザインされたオリジナルグッズが映えるよう配慮しています。

ヤエックス新社屋の外観

ヤエックス新社屋の外観


■構想から完成までの10年

 新社屋建設に至る以前の平成26年には新社屋の向かいに立地するヤエックス配送センターの耐震・内装改修工事の設計・監理を担当させていただきました。当時から新社屋建設の構想は加納宏会長からお聴きしており、10年近くの歳月を経て、新社屋完成に至りました。平成12年以降は東海豪雨、リーマンショック、コロナ禍など様々な困難がありました。このような困難な状況の中、配送センター耐震改修や新社屋建設の設計監理を担当させていただきましたご縁に感謝いたします。
 ヤエックスの将来の益々のご発展を心からお祈りいたします。

建築プランニング・デザイングループ  間瀬高歩・塗師木伸介

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