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239号(2023年5月号)きんきょう&イベントのお知らせ

ノラカブル研究会


近年の都市政策は、商業施設に負けず劣らずの『心地よい』空間を生み出していますが、どれも似たり寄ったりの定型化された空間になってはいないでしょうか。

 近年の都市政策は、商業施設に負けず劣らずの『心地よい』空間を生み出していますが、どれも似たり寄ったりの定型化された空間になってはいないでしょうか。
 本研究会では、心地よく整えられた道路空間、いわゆるウォーカブル事業を対象に「それってほんまに心地ええの?」と問いかけを行いました。そこで生まれたワードが、『ノラカブル』=『野良のウォーカブル空間』です。意図的に作られたのではなく、自然発生的な魅力ある通り空間から「心地よい通り空間」の要素を抽出しようと試みたわけです。そこで挙げられたノラカブル空間は、写真のような「素朴なんだけどどこかわくわくして視線が動く小道」でした。
 ここで個人的な昔話を挟みます。私の実家は郊外のミニ開発ですが、隣に集落がありました。集落へ行くには小さな川を渡って鍵型の路地を通り抜ける必要があります。その路地では様々な体験ができるのです。路地から見える庭木の花や実の様相、塀に座る猫たち、小さな橋から覗く川の模様、ごつごつした石畳の踏み心地。ただ歩くだけではない、様々な体験、過ごし方ができる道でした。誰が作ったというわけではないけれども、なんかいい。研究会ではこの『なんかいい』を言語化し、それを新たに生み出すためのデザイン手法について検討しました。


 結論を要約すると、『作り込みすぎない』ことです。余白や選択肢を設け、ユーザーの行動を規定しない。沿道の住民や歩行者が、『予期せぬ行動(緑を置いたり、猫の溜まり場になったり…)』をとることで、プランナーも想定しなかった自由な過ごし方が生まれる環境が作られるのではないでしょうか。そうなるとプランナーは計画しないことを計画しなければいけないのですが、これも面白いテーマです。研究会の成果はホームページから見ていただけますと幸いです。

ホームページ → 研究会の成果

ソーシャル・イノベーティブデザイングループ 筈谷友紀子

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