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236号(2022年11月号)特集「器」

器から都市のあり方を考えてみた


私は食べることは好きですが、食器にはあまりこだわりがありません。強いて言うならあまりたくさん物を増やしたくないので、個性的で料理を選んでしまうような器よりも、どんな料理にも使える控えめなデザインで丈夫な器が好みです。

 私は食べることは好きですが、食器にはあまりこだわりがありません。強いて言うならあまりたくさん物を増やしたくないので、個性的で料理を選んでしまうような器よりも、どんな料理にも使える控えめなデザインで丈夫な器が好みです。
 しかし、食器に見た目や触感で料理をおいしくする大切な役目があることは理解できますし、いろいろ揃えると食卓がにぎやかで楽しくなるだろうなとも思います。
 ところで、私たちの仕事のフィールドである都市や地域は器に例えられることがあります。その場合、料理は人々や地域の資源、経済活動などでしょうか。
 その器である都市は、人口減少が進む中、生き残りをかけて少しでも価値を高めようと、その土地の歴史や自然などをよりどころにして個性を磨こうとします。一方で、価値観やライフスタイルの多様化が進んでおり、都市が個性的になるとそれに合う人は良いのですが、そうでない人は離れていってしまうでしょう。個性を磨いたのは良いものの、価値が上がりすぎて若い世代が住めなくなり人口が流出してしまっている都市もあります。
 こだわりを持つポイントは人それぞれであり、私が器にこだわらないように自分が住むところにあまり興味がない人もいます。
 都市が生き残るには、どんな料理も受け入れられるシンプルな器のように、あまり個性を主張せず、それでいてどんなライフスタイルも受け入れられるような、全方位型を目指すのも一つの方向性かもしれません。
 以上、器というテーマから、ちょっと真面目に都市のあり方を考えてみました。



都市・地域プランニンググループ 石川聡史

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