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Letters arpak書籍紹介『場所の記憶 大阪東部下町 /旧神路村界隈とその周辺まちづくり史』(竹内睦男著 南風舎)
ディープなまちづくり史に触れる一冊 旧神路村と聞いて、大阪の人でもピンとくる人は少ないのではないでしょうか。現在の地名では概ね東成区の今里界隈に相当するようですが、地図を見る限り神路小学校にその他をとどめるに過ぎません。
ディープなまちづくり史に触れる一冊
旧神路村と聞いて、大阪の人でもピンとくる人は少ないのではないでしょうか。現在の地名では概ね東成区の今里界隈に相当するようですが、地図を見る限り神路小学校にその他をとどめるに過ぎません。本書は、都市プランナーの竹内陸男氏によって自身が生まれ育った旧神路村界隈の「場所の記憶」について、まちづくり史という切り口から極めて丁寧に語られた入魂の書です(少なくとも私はそう受け止めました)。
この地に人びとが住み始めた古墳時代末期から始まり、難波京域の一角であった時代、四天王寺の新荘園であった時代を経て、その後、奈良へと向かう暗峠奈良街道が開設され、江戸時代には幕府直轄領となり、明治の合併により神路村の前身である南新開荘村が誕生、このあたりまでが第1部の「まちづくり前史」。大阪の市域拡張とともに1925(大正14)年に大阪市に編入、ここからが本編である第2部の「地域まちづくり史」の始まり。大正期からの100年余りのまちづくりの歴史が記述されます。さらに地域の歴史に関わるいくつかのエピソードが第3部の「まちの記憶」として追記されます。
本編の構成として、各事項ともはじめに大阪市全体のまちづくり史があって、その後に旧神路村界隈のまちづくり史が語られます。いくつかトピックが紹介された後に「つまりこういうことだ」と総括されるスタイルで、頭に入りやすいのではありますが、旧神路村のディープなまちづくり史については土地勘がないと読みこなすのにはなかなか骨が折れるのも事実。一方の大阪市全体のまちづくり史については、私自身も業務で多少関わりを持ったことに関連する内容も含め、初めて知ったことがたくさんあり興味深く読みました。
近年、まちづくりで扱うべき対象やその手法も新たな領域へとますます広がっています。しかし、都市や地域のまちづくり史を丹念にひも解き、その前提の上に未来の姿を描いていくべきであることは、これからも変わることはないはずです。世の中が目まぐるしく動いていく時代であるからこそ、そうした点を改めて思い起こさせてくれる本書の存在意義は大きいと思います。
都市・地域プランニンググループ 坂井信行
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