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230号(2021年11月号)特集「つとめて」

ふゆはつと(夙)めて


寒さ厳しき早朝こそがなお良いと、清少納言は「枕草子」で詠っています。平安時代は、地球の「中世温暖期」とも言われ、気候が温暖だったと言われています。それでも暖房がない時代に、ヒートテックを着ることなく、炭でおこした火鉢のみで過ごす朝を想像すると、身に染みる冬の寒さが想像できます。

 寒さ厳しき早朝こそがなお良いと、清少納言は「枕草子」で詠っています。
 平安時代は、地球の「中世温暖期」とも言われ、気候が温暖だったと言われています。それでも暖房がない時代に、ヒートテックを着ることなく、炭でおこした火鉢のみで過ごす朝を想像すると、身に染みる冬の寒さが想像できます。
 私が子どもの頃には、早朝とは言わないまでも、キンと透き通った空気の中、白い息を吐きながら、霜をサクサクと踏みしめ、水溜りの氷をワザとツルツル滑り、登校の道のりを満喫していたことを思い出します。
 大人になった今、霜がおりるほどの厳しい寒さは少なくなりました。とは言え、暖かき布団の誘惑と格闘しながら、眠たいまなこをこじ開けて始まる早朝。朝ごはんや洗濯などの家事にバタつき、時には力尽きた仕事を朝やってしまいと、枕草子の世界観にある早朝の良さを実感できるゆとりある時間はなかなか過ごせていません。旅先であれば、暗がりの中で早朝風呂を思う存分に楽しむのですが。
 今回「つとめる」を考えたときに、枕草子の一節から、四季の移ろいを日々五感で感じていたいという心の欲求と、そのための「心のゆとり」の大事さを、改めて痛感しました。
 ところで、日本人の睡眠時間は世界的に短く、2019年のOECDの調査でも、欧米先進国と比べて1時間以上も少ないという結果が出ています。子ども達に目を向けると、勉強や習い事、スマホ時間の増加に加え、大人達の忙しさにもひきずられ、起床時間は徐々に早くなり、就寝時間は遅くなる傾向にあります。
 大事にしたいこと、時間の使い方は、人それぞれの考え方や正解があるでしょう。それでも、気候変動で日本の四季に変化が訪れてしまう前に、春夏秋冬の良さとそれを感じられる日々のゆとりと大切さを、子ども達にも伝えていきたいと思っている今日この頃です。

サスティナビリティマネジメントグループ 植松陽子

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