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221号(2020年5月号)まちかど

ご近所てくてく 散歩のススメ


令和2年が明けた時には、ほとんどの人が想像し得なかった新しい生活様式が始まっています。

 令和2年が明けた時には、ほとんどの人が想像し得なかった新しい生活様式が始まっています。
 アルパックでも4月初めの緊急事態宣言を受けて、原則在宅勤務、国内外の出張禁止、web会議の推奨など、勤務体制や自宅での過ごし方が目まぐるしく変わりました。
 うがい、手洗いが当たり前となり、「顔も洗いましょう」「できれば家に帰ったらお風呂に入りましょう」と専門家の方がメディアを通して呼びかけているのを聞くと、ふと「禊(みそぎ)」とか「祓(はら)い」という言葉が浮かんできます。
 人類は古来から度々未知の疫病に悩まされながらも乗り越えてきました。目に見えない脅威が相手では武力を以て闘うこともできず、人々はひたすら自然界に宿る神々へ祈ることしかなかったでしょう。そして、果てしない犠牲を払った末に、体を清めること「禊」や「祓い」を行うことで、少しでも感染を防ぐことができるということを、会得したのではないかと思います。他にもさまざまなしきたりや風習が伝えられ、現代においては一見意味のないような風習や村のおきての中にも人々が無意識のうちに危険を直感し、その危険を遠ざけるために築き上げてきた智恵がつまっています。
 例えば、「通夜ぶるまい」の食事の支度は喪家では行わないとか、葬儀場で使用した物は持ち帰らない、といった風習も感染症と結びつけて考えると納得できることがあります。
 在宅勤務で一日中パソコンの前に座る日々の中で、少しでも運動不足を解消するため、早朝や休日には、歩いて行ける範囲の神社巡り散歩を続けています。感染拡大防止策で、鈴緒や手水は使用できないようになっている神社もありましたが、改めて普段何気なく行っている手水の作法にも、先祖の教えが詰まっているように感じました。

伊居太神社と伊居太古墳:尼崎市では最大規模の前方後円墳であったが、社殿地築造のため墳丘は石なわれていて、手水舎の奥に古墳の面影は垣間見える

伊居太神社と伊居太古墳:尼崎市では最大規模の前方後円墳であったが、社殿地築造のため墳丘は石なわれていて、手水舎の奥に古墳の面影は垣間見える

伊佐具神社:延喜式に記載されている「式内社」主祭神;伊狭城入彦尊(いざぎいりひこのみこと)

伊佐具神社:延喜式に記載されている「式内社」主祭神;伊狭城入彦尊(いざぎいりひこのみこと)

 アルパックで再開発に関わったJR尼崎駅前に住み始めて20年になろうとしています。普段は駅と家の往復だけで、地元を歩くことなどほとんどありませんでしたが、今回てくてくと近所を歩くことによって、遠くへ行かなくても身近に祖先の息吹を感じる場所を再認識することができました。
 これを機に、しばらくはご近所歩きや図書館で地域の歴史を調べる時間を楽しんでみようと思います。

西川八幡神社境内にある椨の木と百度石:椨の木は大木となり防風の役割を果たし、建材としても利用され、樹皮は染料や線香の材料にもなる

西川八幡神社境内にある椨の木と百度石:椨の木は大木となり防風の役割を果たし、建材としても利用され、樹皮は染料や線香の材料にもなる

鮒子田稔理 建築プランニング・デザイングループ

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