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252号(2026年1月号)特集「つむぐ景観、生まれる景観」

人々の活動によって生まれる「景観」


 2023年11月に大阪府茨木市にオープンした文化・子育て複合施設「おにクル」が、令和7年度都市景観大賞において「おにクル周辺地区」として優秀賞を受賞しました。アルパックも、この施設整備に関する一連のプロジェクトにかかわった一員として名前を連ねています。

― 令和7年度 都市景観大賞・優秀賞受賞 ―

 2023年11月に大阪府茨木市にオープンした文化・子育て複合施設「おにクル」が、令和7年度都市景観大賞において「おにクル周辺地区」として優秀賞を受賞しました。アルパックも、この施設整備に関する一連のプロジェクトにかかわった一員として名前を連ねています。

  受賞した理由はいくつか挙げられていますが、そのうちの一つとして、「ビジョン構築プロセスの充実度が最終的に形になった施設と人の活動の景を支えていることに注目したい」「立地特性ならびに使い方に関する住民の濃密な対話をしっかりと受け止めるべく、~それに答えた高質な建築デザインとなっている。そのため至る所を居場所とする市民の景が溢れている」と示されています。


 おにクルの整備は、市民会館跡地周辺エリアで設定したキーコンセプト「育てる広場」のもと、施設や広場を市民と共に考え、成長していくエリア整備を目指し、100回を超えるワークショップや社会実験を経て実現しました。
 アルパックも「育てる広場」の実現にむけて、3年間にわたり、市民と一緒に作った仮設芝生広場「IBALAB」や、市民会館跡地周辺市街地のまちかどや軒先、跡地に整備された暫定広場「IBALAB@広場」を舞台として、様々なワークショップや社会実験を行いました。


 社会実験では、まちを楽しむ人たち同士がアイデアを出し合い、まちや広場を使いまくり、市民自らが広場の利用ルールを紡ぎだしていきました。参加した市民の皆さんは、おにクルが設計、整備される前の段階から、「市民自らが活動やまちに関わることで、楽しく過ごす場所がつくられること」や、「多くの人とのつながりが生まれること」「自分たちで使い方を決めることができること」を体験したことで、おにクル整備に対する期待感と参画意識を高め、茨木市における活動人口が高まったのです。

 IBALABの取組は、2019年には「IBALAB plus」と題し、市内中心部の公的空間を活用する社会実験として、まちなかに展開を広げました。おにクルができた暁には、おにクルに集まる人の流れがまちなかに波及し、まちなかに人が歩いて楽しんでいる風景を想像しながら取り組んだことを思い出します。

社会実験実施の様子

社会実験実施の様子



 それも一つのきっかけとして、茨木市では、市民会館跡地周辺エリアを中心としたグランドデザインを設定し、周辺道路の沿道景観の誘導に向けた「みちクル」という取組に発展させ、跡地整備の波及効果を市街地全体に広めていきます。
 「みちクル」では東西軸(JR茨木駅と阪急茨木市駅をつなぐ中央通りと東西通り)の魅力を高めるため、景観デザインの指針となるストリートデザインガイドラインを作成するとともに、その検証のための社会実験を実施しました。

 ガイドラインでは、道路空間、沿道空間だけでなく、歩道から軒先に至る空間を「共創空間」と定義し、居心地のよいまちなかを形成するために重要な空間と位置付けました。この「共創空間」に、滞在や交流が生まれる利活用を行うことで、人の活動がまちに表れ、景観となる空間づくりを目指しました。
 「共創空間」の利活用を検証するための社会実験として、一時的に車道を止めて滞留空間等を設置し、沿道事業者や歩行者による利用を進めましたが、準備の段階で何度も沿道事業者等のステークホルダーに説明や相談を繰り返すことで、少しずつ共感を得られました。

 ストリートデザインガイドラインで定義した共創空間

ストリートデザインガイドラインで定義した共創空間


 本取組は現在も継続中で、ますます沿道事業者等との連携の輪が広がっている様子です。おにクルの開業前後で育まれた、まちを主体的に使う意識がどんどん広がり、「人の活動の景」が東西軸沿道に、さらには市街地全体に広がっていくことが楽しみです。
 アルパックの取組の中で生まれた「IBALAB」という言葉は、茨木+ラボラトリー(実験室)を意味します。このエリアでは、市民一人一人がやってみたいことにチャレンジできる。その化学反応が「つながり」や「思いやり」や「楽しみ」を生み出していく、まさに実験室でした。アルパックはそのような場をつくり、育てることに関われたことが幸せでした。そして、そのIBALABの理念は、施設設計のコンセプト「日々何かが起こり、誰かと出会う」につながっていったと考えます。

 「都市の景観」は地域の歴史の中で長い期間を経て形成され、自然や建築物等の多様な要素で構成されるものであり、そこで生活する人々の舞台としての役割があるといわれます。都市に住み、活動する全ての人々のまちへの関与と協働によって景観は形成されると捉えられます。
 おにクルは、現在、年間200万人が訪れ、様々な市民、団体による多彩な活動、企画が200日以上展開され、魅力的な風景が生まれる施設となっています。それは、施設整備及び周辺市街地での展開に至るあらゆる場面で取り入れられた「場や人を育てる」プロセスそのものが「人の活動の景」を創出したことにほかなりません。

生活デザイングループ 嶋崎雅嘉・太田雅己

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