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252号(2026年1月号)特集「つむぐ景観、生まれる景観」

御堂筋の高質な道路景観づくりと 維持管理・エリアマネジメント


 このたび、御堂筋に設置するほこみちベンチユニットが、グッドデザイン賞を受賞しました。大阪市はじめ、関係者の知恵と創意工夫の結晶だと思っており、改めて感謝申し上げる次第です。
 アルパックは、御堂筋沿道のエリアマネジメント組織であるミナミ御堂筋の会の設立から運営まで一貫して携わっており、今年で10年目を迎えます。この経緯も振り返りつつ、景観・都市デザインのあり方について、考えをまとめてみたいと思います。

― 「御堂筋ほこみちユニットベンチプロジェクト」がグッドデザイン賞受賞 ―

御堂筋ベンチユニットがグッドデザイン受賞
 このたび、御堂筋に設置するほこみちベンチユニットが、グッドデザイン賞を受賞しました。大阪市はじめ、関係者の知恵と創意工夫の結晶だと思っており、改めて感謝申し上げる次第です。
 アルパックは、御堂筋沿道のエリアマネジメント組織であるミナミ御堂筋の会の設立から運営まで一貫して携わっており、今年で10年目を迎えます。この経緯も振り返りつつ、景観・都市デザインのあり方について、考えをまとめてみたいと思います。

 

御堂筋の歩行者空間化と道路協力団体の指定
 ミナミ御堂筋の会(以下、「当会」)の設立契機は、平成26年の御堂筋イルミネーション南進化です。点灯区間が難波駅前まで延伸されることとなり、沿道の地権者が結集して組織化しようと声を上げました。そのうちに御堂筋の側道閉鎖、道路空間再編事業が発表、整備が進み、当会は他の団体と共に道路協力団体の指定を受け、放置自転車の啓発や清掃など沿道の適正化と、オープンカフェなどによる活用に取り組むこととなりました。
 ミナミはかねてより安全・安心、ごみやたばこ、放置自転車やスケボー、客引きなどの課題を多数抱えており、御堂筋も例外ではありませんでした。道路空間の高質化、は口で言うのは簡単ですが、長らく地域で尽力する方々や道路管理者、警察の悩みはつきず、まずは安全・安心な道づくりが一丁目一番地だと感じました。
整備のあり方を地域の方々と話し合いながら、解決策を社会実験で試し、検証・改善を重ねるうち、御堂筋の道路の役割も「通るだけ」の空間から「滞在する」空間にシフト、「周辺への回遊を促し」「関係者が連携して面で課題解決に取り組む」ことが重要ということがわかりました。環境を改善し滞在・回遊を創出することが、地域に経済効果を生むという知見も、地域の方々の理解と参加を後押ししました。

 

管理の課題を乗り越えるほこみちベンチユニット誕生
 こうした流れの中で、社会実験で設置した御堂筋のベンチを、常設化しようという流れになりました。巷の社会実験でよく使われるのは仮設の木製ベンチですが、先に述べた状況からすると、道路管理の面で安全性や耐久性が必要で、かつ御堂筋に相応しいデザインの要求がありました。一方で地域の方々からは「木の温かみが欲しい」というオーダー。どう両立するか悩み、関係者と議論してたどり着いたのが、道路付属物と占用物件のハイブリッドスキーム。道路管理者が耐久性のあるコンクリートベンチを整備し、その上の木製座面を道路協力団体が占用、市と覚書を締結の上で管理運営を分担するものです。
 道路付属物のデザインも、滞在空間としての拡張性や柔軟性を意図し、大阪公立大学嘉名光市教授、京都大学山口敬太准教授の監修のもと、GK設計により複数のデザイン案を提示の上、様々な組み合わせや活用が可能なユニット型に。株式会社OSHIROXがそれに応えてテラゾー素材のオーダーメイドのコンクリートベンチを施工しました。木製座面は越井木材工業株式会社が、林野庁補助金も活用して耐候性のある湿潤処理を施し、有限会社田中製材所が家具インテリアのクオリティの美しい座面に仕上げ、施工を行いました。当会で維持管理を行い、会員企業のバックアップを受けている旨の銘板も設置しています。
 並行して、万博期間を契機に、多くの来訪者をおもてなしする景観づくり、シティドレッシングとして、植栽帯の一角を大阪市から借り受け、植栽のグレードアップ、花壇整備を、ボランティア団体である花輪人プラス様の監修のもと実施しています。

ほこみちベンチユニット

道路付属物を道路管理者が、占用物件を道路協力団体が管理する覚書を締結。 官民連携による維持管理のハイブリッドスキームで運用。

道路付属物を道路管理者が、占用物件を道路協力団体が管理する覚書を締結。
官民連携による維持管理のハイブリッドスキームで運用。

 

持続的な維持管理をあらかじめ組み込んだデザイン
 おかげさまでベンチも花壇も道行く方には大変好評をいただいていますが、こうした経験を重ねてわかったのが、「高質な景観形成」には「持続的な維持管理が最重要」だということ。誤解を恐れずにいうと「整備」はある意味簡単です。いかに、できたあとを高質に保ち続けるか。そこにはお金も人手も必要で、その持続的な仕組みが欠かせません。
 その「使い手」である維持管理主体が使いやすいようにあらかじめイメージし、そこから逆算して「整備」することも重要です。御堂筋の植栽帯は当時、花壇の活用をイメージしていなかったので、潅水装置の整備には大変苦労しました。なお、今では、これらの知見も考慮されて整備がされていますので、大規模な投資をする前に有効性を検証する社会実験のデザインもまた、大事だと考えています。

 

専門家の協働を導く、専門家
 行政、地権者、有識者、道路管理者、警察、デザイナー、専門メーカーなど…多種多様な主体の協働でこの景観デザインは実現していますが、それを導くプロセス、コーディネートは非常に重要と感じました。いわば指揮者・コンダクターのように、各パートの専門、特性や得意技を十分理解し、力を引き出しながら一つの作品を創り上げるプロフェッショナル像は、このプロジェクトにおいてしっくり来ている感じがします。
 今年のグッドデザイン賞受賞者を見ていても、物的なデザインだけではなく、人と人、コミュニティや社会のデザインを行っている事例も多数。デザインの定義や領域も変わってきており、景観・都市デザインもまさにその流れにあるのでしょう。作ってからがはじまりというデザインを、これからも求めていきたいと思います。

絹原 一寛
当社執行役員兼都市再生・マネジメントグループ グループマネージャー。
2025年11月より大阪事務所長に就任。都市・景観計画や都市デザイン・都心やまちなかのエリア再生・エリアマネジメントなどに従事。
ミナミ御堂筋の会・名古屋駅地区街づくり協議会の事務局のほか、大阪公立大学 都市科学・防災研究センターの客員研究員も務める。

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