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212号(2018年11月号)まちかど

坂のまち長崎を訪ねて~傾斜地での暮らしから考える~


長崎と言えば「坂のまち」、傾斜地に広がる独特のまちなみや、そこから生まれる夜景など、長崎の坂は多くの人を惹きつけ魅了しています。

 長崎と言えば「坂のまち」、傾斜地に広がる独特のまちなみや、そこから生まれる夜景など、長崎の坂は多くの人を惹きつけ魅了しています。
 坂のまちで暮らしている人々はどのような思いなのでしょうか。いつも坂のまちに行くたびに、高齢になっても暮らし続けることができるのかなど色々気になります。長崎にはその坂のまちでの暮らしを支える「あるもの」があると聞いて見に行ってきました。
 訪れたのは長崎市立山という、最寄の路面電車の駅から歩いて10分程度の地区です。平地の市街地から連続して広がる斜面地にある住宅地で、下の方は車が入ることができる道路がありますが、途中からは歩道(というか階段)しかなく、歩いてしかアクセスできない住宅がたくさんあります。ちょうど引っ越しの風景を見たのですが、引っ越し屋さんは住宅から道路のあるところまで荷物を背負子のようなもので背負って運搬するという過酷な作業をしていました。上の方にあがってみると、緑が多く、景色も抜群、斜面の関係で道も入り組んでおり、まちとしてはとても魅力が感じられます。一方で、空き家、空き地も多く見られ、斜面地での生活の難しさが目に見えてよく分かりました。

 

遠く海が見え緑も多い

遠く海が見え緑も多い

 

 道路が途切れる場所に目当てのものがありました。それは小さなモノレールのような乗り物で、正式には「斜面移送システム」という名前です。地域の高齢者や妊婦さんなどが斜面地において生活できるように市が設置した公共の交通手段で、対象となる地域の方は無料で乗れるようになっています。
 実はこの交通手段、管理運営の一部は地域住民が担っているそうです。人口減少の中で、都市基盤が十分に整っていない場所で暮らし続けるということは、住民側にとっても覚悟が問われる時代になっているということです。一方で地域に魅力があり、地域を愛し活動する人々がいるところでは、多少不便であっても暮らし続けられるという事例のような気もします。全国的にコンパクトなまちづくりが進められていますが、具体的にどのように進めるのか、ニュータウンも含めた斜面地での取り組みに何かヒントが隠れているのではないかと感じました。

 

ところどころに空地が広がる

ところどころに空地が広がる

 

斜面移送システム「さくら号」

斜面移送システム「さくら号」

 

都市・地域プランニンググループ/橋本晋輔

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