レターズアルパック
Letters arpak確実に「起こる」気候変動に備える適応策
今年2018年は、昨年末からの大雪に始まり、広島・岡山を中心に土砂崩れ等の大きな被害を引き起こした7月の豪雨、伊勢湾台風並みの勢力で上陸し関西国際空港の機能を麻痺させるなど著しい被害を引き起こした9月始めの台風21号など、多くの自然災害が起きました。
今年2018年は、昨年末からの大雪に始まり、広島・岡山を中心に土砂崩れ等の大きな被害を引き起こした7月の豪雨、伊勢湾台風並みの勢力で上陸し関西国際空港の機能を麻痺させるなど著しい被害を引き起こした9月始めの台風21号など、多くの自然災害が起きました。
こうした自然災害増加の原因とされるのが気候変動(地球温暖化)です。気候変動というと気温上昇だけが注目されがちですが、海面上昇による生態系の破壊、農作物等の生育不良、さらには極端な気候の増加、即ち大型の台風、猛烈な大雨や高潮の増加など、地域や社会に大きなインパクトを与えると言われています。
【気候変動とその適応策】
気候変動(地球温暖化)対策には、「緩和策」と「適応策」があります。「緩和策」は気候変動の原因である温室効果ガスの排出量を削減し、気温上昇が起こらないようにする(または上昇幅を抑制する)取組です。一方、「適応策」は実際に起きている(今後起きることが確定している)気温上昇への対策であり、例えば養殖漁業であれば、高水温に強い品種の開発などが該当します。
このように、緩和策と適応策は車の両輪の関係にありますが、これまでは「緩和策」が中心でした。しかし、地球温暖化に関する国際的な評価機関であるIPCCが、今すぐ温室効果ガス排出量をゼロにしても将来的にかなりの気温上昇が避けられないことを明確にしたことから、確実に起こる気候変動に備える「適応策」の重要性が高まっています。
国も「気候変動の影響への適応計画」の策定や「気候変動適応法」の制定など、急速に適応策の取組を進めてきました。同時に、各地域でも地域の課題に即した適応策が求められています。
【アルパックの気候変動への取組】
レターズ205号でも紹介しましたが、現在、アルパックでは、気候変動が原因で起こるとされている様々な影響の調査・研究等を行って適応策を検討したり、適応策の普及啓発事業を行う「地域適応コンソーシアム事業」の中国四国地域事業を環境省から受託しています。また、近畿地域でも普及啓発事業を担当する共同事業者となっています。
当事業は環境省・農林水産省・国土交通省の連携事業として、また文科省等の協力も得て、平成29年度から3カ年の計画で実施されています。全国を6地域に分け、地域の研究機関や自治体と連携し、各地域の課題等から優先順位の高いテーマを選んでいます。
【気候変動による影響の調査・研究】
中国四国地域では、図に示すように、農業、水産業、自然環境、防災(Eco-DRR)の各分野に関する6つのテーマを選びました。各テーマでは、21世紀中又は末の気候を予測した複数の気候シナリオから適したものを選び、調査・研究を進めています。いずれも重要なテーマですが、そのうち瀬戸内海の水産業に関する調査・研究を簡単に紹介します。
瀬戸内海は、国内最大の閉鎖性海域です。豊富な魚介類に恵まれ、水産業が盛んです。一方、将来的に水温が上がると、高水温に弱い魚類の減少や、低水温期に成長する海藻類の生産量の減少などが急速に進み、漁業に大きな影響を与えると想定されています。そこで、本テーマでは、養殖業やその食害魚に関する既存の知見の分析と、将来の水温予測とを元に、水温上昇による養殖業への影響の評価や、その適応策を検討します。
昨年度は、文献調査や関係各県・専門家等へのヒアリングを実施し、瀬戸内海各地の水産業に関する現状や課題を整理しました。今年度は中間報告に向け、前述の気候シナリオを用いて将来の水温を予測するとともに、水温上昇に起因する養殖業等への影響評価や、関連する適応策について検討しています。
【適応策に関する普及啓発事業】
アルパックでは、本事業の開始前から、近畿地域や中国四国地域で気候変動やその適応策に関する普及啓発事業を行ってきました。本事業でも地域の事情に合わせて、適応策に関するワークショップや、コミュニケーションツールの作成、企業研究会などを実施しています。今後も引き続き、効果的な普及啓発を進めていく予定です。
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昨年度の報告や今年度の調査計画の概要は、国立環境研究所が運営する「気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)」で公開されていますので、是非、ご覧ください。
http://www.adaptation-platform.nies.go.jp/index.html
※本業務は、他にサステナビリティマネジメントグループの畑中直樹、中川貴美子、栃本大介、植松陽子、駒和磨が担当しています。
サスティナビリティマネジメントグループ/長沢弘樹
211号(2018年9月号)の他記事
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