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Letters arpak臨済宗大本山妙心寺の総合防災事業が完成しました
3月8日、京都市右京区花園に位置する臨済宗大本山妙心寺の総合防災事業が完成し、厳かに落慶法要が営まれました。
3月8日、京都市右京区花園に位置する臨済宗大本山妙心寺の総合防災事業が完成し、厳かに落慶法要が営まれました。
妙心寺は、大方丈、小方丈、大庫裏、法堂、仏殿、山門、勅使門の国指定重要文化財を中心伽藍として、その周囲に38の塔頭寺院を配置した大寺院です。山内全体が史跡に指定され、多くの塔頭が国や京都府の重要文化財や名勝に指定されています。
この妙心寺の総合防災事業は、平成22~23年度に実施された防災事業の基本方針を検討する調査計画に始まります。調査計画の実施にあたっては、調査委員会を組織し、学識経験者の委員の先生方をはじめ、文化庁、京都府、京都市の方々から、多大なるご指導、ご助言を受けました。
調査の中で特に印象に残っているのは、妙心寺周辺にお住まいの方々へのアンケートの中で、地域の方々が、妙心寺山内全域を、優れた居住環境と捉えられていることでした。妙心寺の文化財的価値と共に、緑やオープンスペースを、地域の憩いの場として、誇りに思う姿が浮かび上がりました。同時に多くの方が、妙心寺を災害から守る必要性を感じていることが明らかになりました。
一方、妙心寺山内の塔頭へのアンケートでは、災害時の避難場所として、「塔頭を提供できる」という回答が多く、提供可能な部屋は、畳数にして実に1300畳にも及ぶこともわかりました。
このように、地域にしっかりと根を下ろしている妙心寺の山域は、実に31ヘクタールに及ぶ広大な面積を有していることから、妙心寺の文化財防災は「点の防災から面の防災へ」、すなわち妙心寺を一つの街として捉え、「街全体の防災」をコンセプトといたしました。
まず、はじめに街の防災として、誰でも初期消火に参加できるように、各塔頭の門の近くに、消火栓を設置することを第一のルールとしました。山内を六つのブロックに分け、既に整備されている貯水槽一基を含み、総水量3000トンに及ぶ五つの貯水槽・ポンプ室を整備し、山内すべての塔頭に、総数119基の消火栓を今回設置いたしました。そのための送水用配管の総延長はおよそ6000メートルにも及んでいます。
また、周辺からの類焼を防ぐために、特に類焼リスクが高いと判断される箇所には、延焼防止用の放水ノズルを設置して延焼防止ラインを構成しています。
妙心寺は南北約600メートル、東西約500メートルの広大な山域の中に、38の塔頭が建ち並ぶことから、災害時の情報伝達と共有を迅速に行うために、すべての塔頭に火災報知器を設置し、光通信を用いて全山の火災情報を本山が把握し、かつ周辺の必要な塔頭に、火災情報を知らせることができる、火災報知設備を設置しました。
工事は平成25年から足かけ5年に及び、本事業にあわせて妙心寺の長年の懸案事項でありました「電線類の地中化」を同時に実施いたしました。
その結果、妙心寺の安全・安心を地下で支えつつ、美しい空の景観が蘇りました。また、防災工事、電線類地中化工事をご担当いただきました工事関係者の皆様には、複雑なパズルのような工程を見事に調整し、無事故で完成していただきました。全山が史跡である山内での掘削工事は、埋蔵文化財の調査や妙心寺の象徴である松の木の保全など様々な難題があり、一つ一つ丁寧に乗り越えていただきました。
現在、妙心寺では、山内の防災計画策定に取り組んでいます。本事業において整備した、ハードを動かすソフトの整備です。
今回の妙心寺の総合防災事業は、そのほとんどが地中にありますが、各塔頭の門の横をはじめとして、山内に密やかに設置された消火栓や放水銃が、妙心寺山内を、そして数多くの文化財を、火災から守る新たな景観となることを調査計画、設計監理に携わった者として心から願っています。
執筆者:建築プランニング・デザイングループ/高坂憲治
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