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  VOL.128●ひと・まち・地域  
  ■歴史・自然を活かした「神紙の森づくり」
『千年の森冒険隊2004』 福井県今立町の取組
京都事務所 石本幸良
 
   


越前和紙の里「今立町」
 越前和紙の里で全国に知られる今立町は福井県のほぼ中央に位置し、私の出身地「武生市」と隣接しています。その中の大滝地区は1500年の伝統と技を受け継ぐ日本一の紙漉の里で、世界に冠たる「手技の里」です。地区の紙祖神(しそじん)岡太(おかもと)神社・大瀧神社(重文)を中心に数多くの歴史遺産が存する「歴史文化の里」であり、その神体山の権現山は天然記念物のブナ原生林が広がり、緑深い自然の森と里人の生活が融和する「森と人との共生の里」です。
 今立町ではこれまで和紙の歴史をはじめ、職人技の見学、紙漉体験などの多くの体験施設および和紙のある風景を楽しめる「和紙の里通り」などの整備を進めています。また、大滝地区では地区の中央を流れる神宮川の砂防工事に伴い、緑のダムづくりを進める自然林の保全と、暗渠化を契機とした大門通の歴史的な町並みの保全・創造、さらには地区全体としてのものづくりの里「大滝浪漫の庄」づくりを目指しています。

平成16年度全国都市再生モデル調査の選定
 今春、まちづくりのアドバイスを求められ、帰省と併せてまちを訪問しましたが、折しも平成16年度の全国都市再生モデル調査の募集開始時期にあたり、内容的にも、地元のまちづくりの熟度からも全国のモデル地区としての要件を揃えており、早速応募することで提案書の作成を始めました。テーマは住んで良し、働いて良し、訪れて良しの「神と紙の郷づくり」を目指し、「住みごこちのよい、ものづくりが元気な『神と紙の郷づくり』」として、福井県和紙工業協同組合、大滝の未来を考える会、今立町の連名で応募しました。結果、6月末に全国の162件の中に選定され、研究の準備を開始していました。

7月の福井集中豪雨による被災
 しかし、7月18日の午前に襲った集中豪雨の結果、神宮川が氾濫し、地区内の多くの家屋で床上浸水の被害を受け、手漉き和紙工場もほとんどが生産できない大規模な被害を受けました。当面は災害復旧活動が優先し、国からも研究延期の打診も出されましたが、多くのボランティアの支援の結果、復旧も早くに進み、また、モデル地区に選定されたこのチャンスを活かして具体的なものづくりの里の実現に対する地区の人の思いが結集し、8月からは具体的な調査研究についての検討を開始しました。

神と紙の郷づくりの会の設置
 調査研究を進めるにあたり、「神と紙の郷づくりの会」を設置、会の中に、「神と紙の郷シンボルロードづくり部会」「ふれあい交流の場づくり部会」「神紙の森づくり部会」「元気なものづくり部会」の4つの部会を設置し、活動を開始しています。

 
   
千年の森冒険隊
 ちょうど各部会の活動の準備を進めていたところ、2002年度から町の「八ツ杉千年の森づくり実行委員会」が開催している「千年の森冒険隊」の取組に、「神紙の森づくり部会」が連携して取り組むこととなりました。この企画は「都市と農村の人と森との新たな交流」を目指し、東京都港区のKissポート財団((財)港区スポーツふれあい文化健康財団)の協力を得て、港区の子どもたちと今立の子どもたちの交流を目的にスタートしました。今年度は、福井豪雨の災害で、里山のいたるところで山肌が現れたこともあり、里山の保全を進めるため、大滝奥の院のブナ林でブナの苗木を地元の方と一緒に植える企画を追加しました。
 
大滝神社の学習
 
     冒険隊は9月18日(土)朝に東京を出発、当日は菜の花の種まき、稲刈りを体験しました。19日は朝から地元のメンバー約30人と、東京の子ども、おかあさん15人と地元の子どもたち約15名の総勢60名ほどが大滝神社に集合しました。宮司から神社の由来を聞いた後、奥の院に向けて山登りを開始。ゆっくりと約1時間ほどで県の天然記念物の「大杉」に到着。昼食後に樹齢800年を越える大杉の前で、地元の方のフルートとハーモニカの演奏に聴き入りました。その後、県の天然記念物の「ゼンマイ桜」の周辺で山肌の現れた斜面地でブナの苗木を植えました。急傾斜で最初は子どもたちもかなりこわがっていましたが(私も最初はへぇーと思うほどの傾斜でした)、植え始めると、そこらじゅうから斜面を駆け回る子どもたちの歓声が山に響き渡りました。約1時間ほどで約500本ほどの苗木を植えました。添え木に子どもたちの名前を書き込み、この内何本が大木になるか、いつの日かもう一度訪れて汗にまみれた時を思い出せたらと感じました。
 下山後に墨流しの体験をした後、夕方からは酒蔵に集まって歓迎会を行いました。少しハードなスケジュールだったかとは思いますが、都会の子どもたちにとっては貴重な体験と交流ができたと思います。このイベントは今後も継続される予定です。

 
   
 
ブナの苗木の植樹   酒蔵での歓迎交流会
 
   
モデル調査研究
 今立町での都市再生モデル調査はまだスタートしたばかりです。これから「ものづくりの里」からの元気な情報発信に向けて、部会ごとに具体的な取組を展開していきます。来年の2月には伝統産業での里づくりの活性化を進める全国の町や村との経験交流「神と紙の郷フォーラム」を開催する予定です。
 大滝地区のみなさんとはまだ半年あまりのおつきあいですが、毎週の打ち合わせには大勢の方が出席され、また、イベントの時には地区上げての取組が行われ、本当に元気な里の印象です。手漉き和紙づくりに携わる方も高齢者の方が多いようですが、非常に元気で高収入と聞いています。全国から若い方も修行にこられ、手漉き和紙の工場の中で、一緒に働く姿を見ていると、大滝地区は本当に住んでよし、働いてよし、訪れてよしの里を実現しており、今後とも交流の中から新たな地区の活力が生まれていくものと思います。
 これから全国のものづくりの里のモデルとなるような調査研究と取組を続けていきますが、調査内容やフォーラムについてはこれからもニュースレターやホームページでご案内させて頂きます。

 

 
VOL.128
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