レターズアルパック210号

文化を活かすビジネスとセンス!

執筆者;名誉会長/三輪泰司

 6月1日、改正文化財保護法が成立しました。今回の改正の特長は、地域社会総がかりで、総合的・計画的に、文化財をまちづくりに活かすこと及び、地方公共団体の首長が文化財保護行政に乗り出し強力に進めるべく関係法の改正も行ったことです。
 地域に根差したシンクタンク・コンサルタントたるもの、施策に追随するだけでなく、「半歩前へ」の精神で実践的に検証してみます。

時代相を映す施策・法令

 法改正の特長は、都道府県レベルでの総合的な施策の「大綱」。市町村レベルでの総合的な「文化財保存活用地域計画」及びその策定への住民参加です。具体的には、計画策定・推進に、行政機関・学識経験者・商工会・観光関係団体プラス、文化財所有者・文化財保存活用支援団体で組織する「協議会」を規定しています。“高次広域計画と地域個別事業”を併せるのは原理に適っており、私達の経営基本戦略であり、実践的に習熟しています。
 “小集団のアソシエイツ”で始まったアルパックは現在、専門のチーム、グループに進化し、それを統括する責任と権限が確立しています。いわゆる、鶴翼の陣、車懸かり戦法です。

保護と計画づくり

 和歌山大学での講義でも実践例を紹介しました。城崎温泉では住民がまちぐるみで国の文化財認定を進め、三条通では商店街振興組合が権利調整に乗り出し、京都府庁旧本館では「応援ネット」が行政組織と協働して新たな計画・運営機構を創り出しています。
 地域のヘリテージ・マネージャー、教育委員会文化財担当者、そして文化庁担当者といった「プロ」のコーチとチームワークが必須でした。

事業者参加

 古今東西「文化財」は地域社会集団や社寺が維持していきました。例えば「ため池」は、農耕に水と肥やしを供給し、“鯉上げ”といった行事が発展し、「行楽」が成長してくると料亭の鯉の養殖でお金が回るシクミが出来てきます。料亭・旅館は、設備産業です。借入・投資・償却・再投資がサイクルします。企業経営体を“かませる”ことで手がたく進めることができます。化学の触媒、幾何の補助線みたいなものです。
 書画骨董、それぞれに個性ある文化財が蓄積されます。地域のブランドが磨かれます。これらの企業は巨大化する必要はありません。地域での「小集団のアソシエイツ」なのです。

継承と人材開発

 地方公共団体に専門的知識・技術を持つ人材が不可欠です。しかし、文化財によっては建造物でも「庭園」があり、無形の資産まであります。条例制定もあります。
 中核市・一般市町村までが、ライセンスを持つ職員を揃えるのは困難でしょう。人材を育てるのは「大学」との協働が不可欠です。コンサルタントもうかうかしておれません。アルパックは、「技術士」保持者で抜きんでていたと思っていましたが、JABEE認定が進み大学の役割が高まっています。
 抜きんでるには、二つ。技術士会など、職能団体で奉仕すること、哲学を論じること、武道或いは、茶道・華道、和歌・俳句・謡曲などの「素養」を深めること。
  物事には光と影があります。“住民参加”は、ポピュリズムを招き、伝統的な作法や様式を失うおそれがあります。変革は「文化」から始まり、そこから社会進歩が進みます。カルチュアーから始まった変革は、ファイナンス・ガバナンスへと進行中です。文化が先導し、経済が応援し、統治力がまとめます。それを導くのがコンサルタントの職能です。


レターズアルパック210号・目次

2018年7月発行

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