レターズアルパック208号

公・民協働の文化資産利活用

執筆者;名誉会長/三輪泰司

利活用活動の意義と経緯

 平成17年(2005)3月、京都府庁旧本館利活用検討委員会(委員長:井口和起・元府立大学長)の報告を受け、利活用プロジェクトが始まりました。京都府はNPO平安京と協議を重ね、「府民に親しまれる府庁のシンボル」を目指し、平成20年(2008)10月1日、「旧本館つくりシンポジウム」で、利活用活動がスタートしました。
 京都府庁は、徳川幕府の京都守護職―松平容保の屋敷跡。明治の文明開化の時代になり、松室重光設計になる旧本館は、煉瓦造、ネオ・ルネッサンス様式。以後の庁舎建築のモデルになりました。明治37年(1904)の竣工から100年目に重要文化財になりました。

文化財資産活用の条件

 旧本館は、京都府の資産です。維持・修復の費用は公費で、議会で議決され、チェックを受けます。利活用を始めた時、旧議場は府政情報センターであった他、およそ三分の二が現役の事務室として使われていました。
 公開されていた旧知事室の家具調度も立派です。七代目小川治兵衛の作庭になる庭もけっこうな舞台です。殊に、中庭のしだれ桜が素晴らしい。
 文化財建造物は、建築基準法は適用除外ですが、消防法の適用は受けます。文化財保護法では、火の使用や飲食は禁じられていませんが、消防署の指導・監督を受けます。シンメトリーな建築では、慣れた人でも、場所・方角に迷うことがあります。一般公開には、サイン・照明の工夫が必要です。


山田啓二知事に表紙題字を頂き、府庁旧本館利活用応援ネット 〈代表・金井萬造〉が、
初動から旧議場修復までの約8年間の活動記録を出版しました。

文化資産活用のシクミ

 「利活用応援ネット」は、公と民が協働する乗り降り自由のプラットフォームです。毎月の定例会議の役割は、企画・調整・評価です。来訪者数、アンケート分析は「次」に活かされます。
 春の観桜祭、秋の観芸祭が定番になりました。正庁での連続講座は、門川大作・京都市長の観光講座で始まりました。府庁界隈のお店などを巡るツアー、御所の一般公開との連携も拡がりました。入れ替わり立ち代わり参加した団体は100を超えました。旧議場修復に団体長が署名活動をし、議員さんも応援して下さいました。
 結婚式や映画・TV撮影は、府直営で有料。利活用は無報酬・無料ですが“お志”は頂き、文化財保護基金に寄付します。こだわりマルシェのように、テントなどの設備を持ち、収益を伴う事業は、実行委員会が当たります。

愉しく、面白く

 お祭のオープニングは、府警音楽隊、カラーガードが盛り上げて下さり、平安騎馬隊のお馬さん、ゆるキャラの「まゆまろ」は、子どもたちに大人気。桜守・佐野藤右衛門さんが、中庭の山桜が新種だと見つけ、守護職に因んで「容保桜」と命名。ちょうどNHK「八重の桜」ブームでしたので、命名式には会津若松から市長さんが地元新聞社ごとお越しになりました。
 利活用応援ネットは、審議・決定のアッセンブリー型定例会議とともに、フリーに一杯飲んで談論風発のフォーラム型ミーテイングも持ちます。この方が、公と民の立場の違いを理解し、アイデアをぶつけ合う、エネルギーのみなもとになったかもしれません。

文化遺産の価値を高める

 目標の一つ、旧議場修復は、平成28年(2016)3月、第2期工事をもって完成しました。2階傍聴席、照度を上げたシャンデリアもできました。
 文化財建造物は、綿密に調査し、肝心な所は、ちゃんと修復しなといけません。施工する職方のワザも大事です。そのココロが、現場から設計、議会審議、知事決裁とすべての経過で貫かれ、文化遺産の価値が高まりました。屋根の修復は終わっていますが、耐震補強の検討、地下空間の整備などが残っています。
 利活用応援ネット定例会議は100回を超えました。修復成った旧議場の利活用も進んでいます。8年ほど、利活用応援ネットの座長を勤め、金井座長に引き継ぎました。退任記念に旧本館の模型を頂き恐縮です。ありがとうございます。


レターズアルパック208号・目次

2018年3月発行

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