レターズアルパック204号

うまいもの通信

執筆者;編集委員会(坂井信行、嶋崎雅嘉、長沢弘樹、中村孝子)

編集委員が各地の涼しいうまいものを見つけてきました

御食国若狭のくずまんじゅう

 毎年、夏になると京都から若狭街道をぬけ、小浜までくずまんじゅうを買いに行きます。別名鯖街道といわれる若狭街道は、鯖寿司や焼き鯖で有名ですが、うまいもんは鯖だけではありません。初夏になるとくずまんじゅうが、和菓子屋の店頭に並びます。水槽に浮かぶ涼しげなくずまんじゅうは、若狭地方の夏の風物詩の一つといえます。
 私のお薦めの伊勢屋(創業天保元年)のくずまんじゅうは、あっさりしたこしあんで何個でも食べることができます。生産や水槽に使われる水は、地下約30メートルからくみ上げられているわき水「雲城水」(平成の名水百選)で、まろやかな水がおいしさを引き立てます。また、保存料が使用されていないので消費期限が当日限りなのも貴重なひと品です。お店で食べることもできるので、週末ともなるとぎょうさんのお客さんで賑わいます。
 さて、葛といえば、関西では吉野葛が有名ですが、若狭地方の熊川も古くから本葛の産地です。熊川葛は現在、製造技術が地元の熊川葛振興会で伝えられるのみで、生産量がわずかなため貴重な葛となっています。街道沿いの宿場町「熊川宿」(重要伝統的建造物群保存地区)でも、くずまんじゅうやくずきりを食べることができます。暑い夏に涼を求めに、皆さんも若狭の国に足を運んでみませんか。(中村孝子)
伊勢屋 福井県小浜市一番町1の6
若狭鯖街道熊川宿ホームページ → http://kumagawa-juku.com/


伊勢屋のくずまんじゅう

店頭の水槽のくずまんじゅう

宿場町「熊川宿」のまちなみ

熊川宿のくずきり

南アルプス天然氷の宇治金時

 夏の時期にかき氷を食べるのはポピュラーな涼の取り方の一つでしょう。昔ながらの夏の風物詩として代表的なものであり、夏祭りや夏フェスなど、どこのイベント会場でもかき氷屋さんを探すことは簡単です。しかし、ここでご紹介するのは天然氷をつかった一味違うかき氷です。
 天然氷というのは、天然、つまり地球の寒さによって凍らせた氷のことです。といっても、氷山から切り出してくるようなものではなく、伝統技術によりじっくりと時間をかけて手作業でつくられ、夏になるまで氷室で保存されていた氷です。ゆっくりと凍らせることで不純物を含まない、非常に透明度の高い氷が出来上がるそうです。
 天然氷のかき氷が食べられるお店はたくさんありますが、今回は東京北区の十条にある、だるまや餅菓子店で宇治金時をいただきました。天然氷のかき氷を食べるのは初めての体験でした。見た目からして存在感のあるかき氷なのですが、一口食べると普通のかき氷との違いはすぐにわかります。何と表現すれば良いのでしょう、ふわふわとした感じで、口の中ですぅっと溶けていきます。頭も痛くなりません。
 このかき氷には、南アルプス・八ヶ岳の麓にある蔵元八義(やつよし)が、名水百選に選定されている「八ヶ岳南麓高原湧水群」の水を凍らせてつくった天然氷が使われています。八義は全国に七つしかない天然氷の蔵元の一つで、2015年から出荷が始まった新しい蔵元です。伝統技術でつくられた天然氷のかき氷、少し大げさかもしれませんが、食べてみるとかき氷の概念がくつがえりますよ。(坂井信行)
だるまや餅菓子店 東京都北区十条仲原1の3の6です。


 

 

貴船の川床流しそうめん

 盛夏の折、京都はどこも暑苦しく、外に出るのもおっくうです。そん な時のおすすめが、京都随一の避暑地である貴船の川床で食べる流しそうめんです。
 貴船は京都の避暑地だけあって、たどり着くには少し時間を要します。まず京阪電車の終点、出町柳駅。鴨川の横にあって一見涼しげですが、そんなことはなく、うだるような京都の猛暑の洗礼を受けます。叡山電車に乗り換え、おおよそ30分で貴船駅です。電車を降りると少しひんやりとした空気に包まれ、先ほどの暑さを忘れてしまいます。バスに乗り換え、5分で貴船神社です。周囲には川床の店がいくつも並び、その一つが今回の目的地「料理旅館ひろ文」です。


  

 待つこと30分、ようやく順番が回ってきました。正面に滝を見据えたロケーションはそれだけで涼しげで、お客さんにも好評です。京都の暑さから逃げてきたのか、外国人も多く見られます。その後、決められたレーン以外のそうめんは取らない、などのルールを聞き、ようやく流しそうめんが始まります。
 そうめんの流れは予想より速く、気を緩めると取り損ねそうになります。この絶妙のスピードも人気の一因でしょう。取り損ねて悔しがる声が、左右の席から聞こえます。15分くらいでピンクのそうめんが流れてきたら終了です。帰りは貴船神社にも寄り、ちょっとした小旅行気分です。
 本格的な川床料理に比べて手軽な流しそうめんは、週末には数時間待ちになることもあるとか。それも手軽に避暑を楽しみたい京都人と観光客に待ち望まれているが故のこと。少々の待ち時間も避暑の一環と考え、楽しく過ごすのが良さそうです。(長沢弘樹)
京都貴船 料理旅館ひろ文 京都市左京区鞍馬貴船町


 

 

地域の物語が見えるクラフトビール

 暑い夏。冷えたビールをグビッと飲むのが美味しい季節ですね。
 1994年の酒税法改正によって全国各地に地ビール会社が誕生しました。その後、一時期下火になりブルワリーも減少していましたが、2012年頃から「クラフトビール」という呼び方が定着して再びブームになっています。現在、巻き起こっているクラフトビールブームには、いくつかの要因があるようです。
 一つには、一定の生産量を確保したブルワリーが大型店などにも商品を置くようになり、クラフトビールがより消費者の身近なものになってきていること(「よなよなエール」で知られるヤッホーブルーイングなど)。もう一つは、第1次ブームが去った後、生き残ったブルワリーの醸造技術がレベルアップし、「高い割に美味しくない」というマイナスイメージが払拭されたこと。さらに、大量生産の「のどごし重視」のビールに飽き足らない消費者が、自分好みのビールを選択する志向が高まってきたことなどがあげられます。
 私達も、お仕事をさせていただく機会のできた地域において生産されている地ビールを購入し、その業務に参画するメンバーで楽しむことにしています。これまでに伊丹市の小西酒造で生産されている「OSAKA BAY BLUES」(苦味は少なく、程よい甘みと柑橘的な風味)や、倉敷市の真備竹林麦酒醸造所で生産されている「ささ」(フルーティーですっきりさわやかな味わい)などを楽しみました。それぞれのビールに独特の味わいがあり、ビールを飲むことによってその地域の個性に思いを寄せることが出来るように思います。特に倉敷市の「ささ」は精神障害者の方の支援を行っているNPO法人岡山マインド「こころ」が醸造所を運営し、地ビールづくりがまちの人たちの生活を支えています。「ささ」を飲むことで地域の人達を応援することができるのです。
 クラフトビールを飲んで味わいを楽しむとともに、その土地で生産される「麦」や「水」、醸造に関わる「人」など、ビールの泡の向こうに見える様々な物語を楽しんでみてください。(嶋崎雅嘉)
小西酒造 兵庫県伊丹市東有岡2の13 http://www.konishi.co.jp/
真備竹林麦酒醸造所 岡山県倉敷市真備町箭田1679の2 http://mindkokoro.web.fc2.com/beermabi.html
中尾酒造 茨木市宿久庄5の32の12 https://www.facebook.com/mishimaomachi/


茨木市では地ビールの代わりに地域のお米で造られた地酒(中尾酒造)を楽しみました 

レターズアルパック204号・目次

2017年8月発行

特集「涼む」

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地域に寄り添って地方創生を考える

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