レターズアルパック202号

特集「願い」
まちの歴史や文化を次世代に引き継ぐことが地域の願いです。

執筆者;地域再生デザイングループ/嶋崎雅嘉

 先日、柑橘栽培や漁業が活発なまちとして有名な愛媛県八幡浜市を訪れました。まちを歩くと交易拠点として発展した明治期の雰囲気を感じさせる町家が点在していますが、空き家となり老朽化にまかせている建物が多く見られます。
 まちで出会った伝統工芸士の若松さんのお話を聞くと、時の経過とともに古い建物はどんどんなくなってしまう、まちの歴史にとって重要な建物でも朽ち果てていくことを心配されていました。
 若松さんご自身の住居兼仕事場である建物も古い建築物であり、大切に使われているのですが、土壁が下がってきたり、壁の外側をトタン板で養生せざるを得ない状況です。この修繕には、莫大な費用がかかるため修繕ができない現状を悩んでおられました。


 

価値観の共有と修繕費を生み出す仕組みが必要

 ニュースレター184号などでも紹介している「樫原町家灯篭会」でも古い町家がどんどんつぶされ町並みが変化してきている中、同じような課題認識をもって活動に取り組んでいます。
 昨年、行われた「のきさき市」では、町家の軒先を借りたお店が出されました。出店にあたっては出店料を設定し、軒先をお借りした町家居住者の方に場所代を支払う仕組みが導入されました。これは将来的に、空き家となっている町家などを活用して、賃貸料などの資金を得ながら、修繕や維持管理にお金を回す仕組みを目指した第一歩として取り組まれたものです。
 「のきさき市」の開催により往時のにぎわい風景が復活し、町家が立ち並ぶまちの原風景の良さを、多くのまちの人たちが再確認したと思います。そのことにより、自らが住むまちに対する誇りを高めてもらうこと、そして、この町並みや建物を残すことの大切さや価値を理解してもらうことを目的の一つとして取り組まれています。


  

建物だけが保存されるのではなく、まちの中でどのように引き継ぐかを考える

 一方、京都市都心部などではインバウンドなどの効果もあり一棟貨しの簡易宿所として町家や長屋の活用が進んでいます。宿屋の運営により改修資金が生み出され、京町家の保全は進んでいると捉えることができますが、キーボックスやネット予約だけで運営される宿屋は、まちに対して閉鎖的でまちの中でその存在が浮いてしまい、場合によっては地域の住環境を脅かす存在にもなりかねません。地域の文化や歴史を引き継ぎたいという願いを叶えるためには、建物単体が残るだけではなく、地域に開き、地域の暮らしやコミュニティに貢献できる場としての活用が望まれます。
 町家などの歴史的な建築物は、そのまちの歴史や文化の積み重ねの中でその場所に存在しています。古い建物や町並みを次世代に引き継ぐうえで、将来のまちに何を引き継ぐのか、その中で古い建物がどのような存在となりえるのかをイメージして、活用の手法を考えることが大切です。


 

八幡浜で描く夢

 若松さんのお話によると、八幡浜市では5月初旬~中旬になると、みかんの花が一斉に咲き、街なかがみかんの花の甘い香りでいっぱいになるそうです。いつか、古い町家を活かした宿屋に泊り、地域の方のお話を聞きながらみかんの花の香りに充たされた、のんびりとした時間を過ごしたいと願っています。

地細工紺屋 若松旗店
http://iyokannet.jp/corporate/spot/detail/place_id/3544/


レターズアルパック202号・目次

2017年3月1日発行

特集「願い」

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