アルパックニュースレター188号

地域から少子高齢化への対応を考える その8~介護需要と対応を考える

執筆者;代表取締役社長 森脇宏

 前号(No.187)の「その7」では、介護問題を視野に入れ、例示的に90歳以上の将来人口を紹介して、その急増傾向と地域によっては一層激しく増加することを指摘しました。今回は、さらに一歩踏み込んで、関西(2府4県)における介護需要の急増ぶりを具体的に推計し、その対応の難しさを考察してみます。

介護需要推計の考え方

 介護需要については、ご存じのように要介護1~5等に区分して認定されており、数字が増えるほど、介護のニーズが大きくなります。ここでは代表して要介護3以上の要介護者数に着目し、その現状と将来を推計してみることにします。要介護3以上に着目したのは、特別養護老人ホーム(以下、特養)の入所待ちが著しく多いため、今後の入所者を要介護3以上にしてはどうか、という議論があることから、一つの目処としました。要介護3とは、例えば「一人で立ち上がったり歩いたりできない。排泄や入浴、着替えなどに全介助が必要」とされています。
 推計は、高齢者人口に占める要介護3以上の比率が、将来にわたって不変と仮定して行いました。具体的に用いたデータは、要介護者数(要介護3以上)は介護給付費実態調査(2013年8月)、高齢者人口は総務省(2013年10月)、将来人口は国立社会保障・人口問題研究所(2013年3月推計)で、いずれも府県別・性別・年齢階層別のものです。

急増する介護需要

 こうして推計した結果を基準年の2010年を100として指標化したものが図1のグラフです。全体として要介護者(要介護3以上)の急増がみられ、滋賀県を除いて2035年がピークで、2040年には少し減少しています。また、大阪府の急増ぶりが著しく、2035年のピークには2010年の220%程度に達しています。逆に和歌山県の2035年は2010年の150%強にとどまり、他の4府県は概ね同程度の急増傾向で、2035年は2010年の200%程度となっています。2035年の要介護者の中心は85歳~89歳と推計されましたので、現在の団塊の世代が概ね該当し、これらの年代の方が占める割合の差が、府県ごとの要介護者の伸びの違いをもたらしたのだと思われます。

急増する介護需要への対応の考え方

 こうして急増する介護需要に、どのように対応していくのでしょうか。介護需要のピークが2035年ですから、本来そこを目標に考えるべきだと思いますが、あまり先の話だと「そのうちに・・・・」と先送りになりかねませんので、少し手前の2030年を目標年として考えてみましょう。統計の基準年(2010年)から数えると20年後ですが、現在(2014年)から数えると16年後ですので、少しリアル感が出てくると思います。
 介護需要に対する介護サービスは、ご存じのように主に居宅サービスと施設サービスに分けられます。このうち居宅サービスとは、自宅に居ながら利用できる介護サービスのことで、最近増えているサービス付き高齢者住宅も、居宅サービスの範疇に入ります。施設サービスとは、特養など施設に入所して利用する介護サービスのことです(他のサービスもありますが、ここでは主な二つに絞っておきます)。
 現在の制度運用の流れとしては、居宅サービスを広げ、施設サービスは抑制することを目指しているようです。しかし、その一方で、特養に入所を希望して何年も待っておられる方もおられます。また、施設サービスを特養とともに構成している介護老人保健施設(以下、老健)は、在宅への復帰を目標に機能回復訓練をする施設とされていますが、実態としては特養に入所できない方の利用も多く、「老健の特養化」が指摘されています。したがって、現時点で既に特養の需要が供給を大きく上回っている実態があり、単純に「施設サービスの抑制」とは言い難い状況にあります。こうした状況の中で、将来の介護サービスをどうするかは、介護保険の保険者(原則的に市町村)が検討すべきことですから、勝手に予測する訳にはいきません。

特養の所要施設数の試算

 そこで、現在の施設サービスが介護サービスに占めるウエイトが変わらないと想定して、特養が新たにどの程度必要になるかを府県ごとに試算してみることにしました。具体的には、次の2点を仮定して、2030年までに増やすべき特養の施設数を推計してみます。まず第1に、特養に入所されている方は全員が要介護3以上の方で、要介護3以上の方のうち入所されている方の比率は、現在も将来も変わらないと仮定します。この比率を府県ごとに算定し、要介護3以上の要介護者数を乗ずれば、特養の将来の入所者数が試算できます。第2に、特養の平均入所者数を求め、これも現状と将来で変わらないとします。平均入所者数も府県ごとに算定し、府県ごとの入所者数を平均入所者数で除すれば、必要な特養の施設数が試算できます。
 こうして試算した特養の必要数は、表1に示すとおりで、2010年から2030年の20年間でみれば、最も多く特養の新設が必要とされる大阪では305施設、毎年15施設のペースで増やす必要があると試算されます。実際には居宅サービスのウエイトを高める方向で対応されると思われますが、そうは言っても全く整備しないという訳にはいかないと思います。

居宅サービス拡充に向けた課題など

 居宅サービスを拡充して対応するとしても、そのマンパワーの確保がたいへんだと思います。例えば最も介護需要が急増し、それへの対応が厳しい大阪府では、2030年の介護需要が現在の2倍を超え、しかも居宅サービスのウエイトを高めると、現在のマンパワーの3~4倍あるいはもっと多くが必要になってくるかも知れません。そうした人材の育成と確保、そして実際にサービスを提供していく体制が確立できるのでしょうか。
 その他、看取りの体制、介護需要そのものを減らすための介護予防、介護保険料など、他の課題もありますが、紙幅の関係から省略させていただきます。

より厳しい市区町も存在

 前述のように府県によって将来の介護需要は異なりますが、これを市区町村ごとにみると、より一層介護需要が急増し、それへの対応が厳しい市区町が鮮明になってきます。例えば、要介護3以上の要介護者数の2010年から2030年にかけての増加率を、府県と同様の考え方で試算すると、増加率の高い上位20市区町は表2のとおりです。最も増加率の高い枚方市では、2.5倍以上、約8千人の増加が試算されます。以下、神戸市西区、京都市山科区、精華町、四條畷市などが続いています。全体として、バブル崩壊後も比較的堅調に人口を増やしてきた市区町が並んでいます。前述の大阪府について指摘した特養の新設需要や、居宅サービスのマンパワー確保が、より一層強く求められることになります。