アルパックニュースレター171号

「自ずと成る」まちづくりのススメ

執筆者;大阪事務所/坂井信行

都市計画学会関西支部では平成20年度から「新しい都市計画教程研究会」(委員長は久隆浩近畿大学教授)において、これからの時代にふさわしい都市計画の教程のあり方について議論が重ねられてきました。私も研究会の末席に加えていただきましたが、日々の業務の中で漠然と考えていたことを自分なりに整理をする良い機会ともなりました。このたび、支部設立20周年を迎えるにあたり、その記念として研究会の議論の成果が 「都市・まちづくり学入門」として取りまとめられ、学芸出版社より出版されました。
この本に通底する考え方は「自ずと成る」まちづくりです。つまり、これまでのお金や権力で大きくつくる都市計画から、自然な小さな変化を自律的に積み重ねることにより自ずと成らしめる都市・まちづくりという考え方です。ごく大雑把にいうと、これまでの都市計画では都市の現況を把握し、将来予測に基づく目標を設定し、その実現に向けた取り組みを考えてきました。しかし、少子高齢時代の到来をはじめとするさまざまな社会の変化の中で、計画の目標設定にあたっての将来予測そのものが意味をなさなくなっているといえるのではないでしょうか。
そもそも都市は建物のように設計者が描いた図面どおりにつくられていくものではありません。特に現代の都市は全体を統括する意志や原理に基づいてつくられていくものではなく、個々の意図が積み重なることにより自ずと成っていくものなのです。まずは都市を成らしめているこうした原理を読み解いて、その上で地域のさまざまな資源の関係を紡ぎ、編集することでより良い方向へと成らしめていくという本来の都市・まちづくりを目指そうという主張です。
私も2章分の執筆を担当させていただいています。本書は、大学などでの都市計画やまちづくりの教育の現場において副読本として活用できるものを目指したものですが、アルパックニュースレターの読者のみなさんにとってもきっと興味深くお読みいただくことができるのではないかと思います。